欧州〜南米ディレイ日記 17
カテゴリ:日記

 

 11月21日。午前三時にロビー集合。そのままバスに乗って空港へ向かった。早朝なのに、空港はどこかへ向かう人たちで賑わっていた。その賑わいをかき分けるようにして、まずはチェックインカウンターでチケットの発行、そして荷物を預けた。

 

 ツアー中はとにかくチェックインの作業が大変で辟易としていた。とにかく、日本に比べて航空会社の職員の対応が遅いのだ。全員分のバゲージと機材を預けるのに一時間以上かかるのが当たり前だった。この日だって、その手間を考えて朝の3時集合なんていう信じられないスケジュールになってしまった。まあ、四の五の言っても仕方がないので、一時間くらいかけて荷物を預けた。

 

 手荷物検査を受けて、空港内へ。メキシコは、パスポートへの捺印を飛行機に乗るときにするらしく、甘い感じのチェックを受けて出発ロビーに入った。免税店は早朝からビカビカと開店していてけれど、何も買う気にはなれず、スターバックスの列に並んで、15分くらいかけてエスプレッソのダブルを購入して、3秒で飲んだ。

 

 特に南米に入ってからだけど、日本で売られているようなアメリカンコーヒーがレストランや楽屋にない、あるいはあっても不味いということが多くて、旅の途中からエスプレッソを注文するようにしていた。というのも、どこのレストランやカフェでも、エスプレッソマシンはちゃんとしてそうな見かけだったからだ。濃くしてしまえば、まあ、コーヒーの枠を外れてくることはないだろうという予想もあった。結果として、エスプレッソにハズレなしということがわかったのだけれど。ただのコーヒーは当たり外れが多い。チリの楽屋では、コーヒーメーカーからお湯が豆もろとも床に溢れ出して、大変なことになった。このときに、俺はコーヒーを諦めたといっても過言ではなかった。

 

 ゲートが移動になって、ちょっと不安になったが無事に出国。まずは成田便への乗り換えのためにロサンゼルスに移動。

 

 なんと、ロスでは一度荷物と機材を降ろしてからアメリカに入国しなければならないとのこと。「め、めんどくせえ」という言葉しか脳内に浮かび上がらなかったけれども、それをしないといけないということだったので、ロスで機材を降ろし再度預けた。同じ航空会社なのに。

 

 アメリカの空港職員はとても親切で、フランスと南米での怠慢な労働に慣れた我々には神のような対応だった。荷物を運ぶのを手伝ってくれさえもした。勝手に手伝おうとする者たちを泥棒やかっぱらいの類だと決めつける癖がついていたので、なかなか受け入れる気持ちにならなかったけれども、改心して運んで少し手伝ってもらったりした。疑心暗鬼のまま日本に帰るところだった。

 

 息をつく間もなく成田便の搭乗口へ。お土産を買う時間がなかったけれど、ビールを飲む時間くらいはあったので、建さんと搭乗口近くのカウンターバーでビールを注文した。メキシコで缶ビールを奢ってもらったので、生ビールをご馳走した。奢ってもらったビールの3倍くらいの値段だったけれども、まあ良しとした。カウンターを挟んで反対側では、プライマルスクリームのボビー・ギレスピーがサッカー観戦をしながらビールを飲んでいた。

 

 ビールをのんびり飲んでいると、アメリカン航空から呼び出し。俺と建さんの名前が呼ばれたので、急いで搭乗口へ向かった。

 

 ここからは延々、寝たり起きたり、映画を観たり、とにかく長いフライトだった。アメリカン航空のエンタテインメントサービスは言語設定で日本語が選べるものの、映画は吹き替えも字幕もナシのガチンコ英語使用で、毎度、なんとかしてくれと思う。仕方がないので、『ミニオンズ』を途中まで観てみたけれども、吹替え前の声も鶴瓶っぽい以外に心が動かずに途中で止めて、エイミー・ワインハウスの伝記映画を観て、そのあとは読書と睡眠を繰り返した。

 

 まあ、特に書き留めたい場面に遭遇することもなく、飛行機は無事に成田に到着。トイレの自動洗浄便座に癒されながら、やっと帰ってきたという感慨と、なんという国なんだという驚きの気持ちが湧き上がった。

 

 入国審査を済ませて、荷物を取り出して、スタッフやメンバーたちと別れた。言葉数は少なかったけれど、誰しもの顔に「大変な旅でしたね、お疲れ様」と書かれているように感じた。俺に顔にもびっしりと書かれていたにちがいない。

 

 

 日本的なものを食べたくなったので、蕎麦屋で板わさとビールを頼んだ。醤油が身体と心に染み込んでいくようだった。おそらく、俺の醤油メーターはエンプティになっていたにちがいない。山葵も美味しかった。

 

 それから、這うようにして家に帰って、湯船に浸かった。22日が終わりかけようとしていた。長い旅だった。

2015-11-21 1448062140
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