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11月17日。サンパウロからブエノスアイレスに到着。飛行機から見下ろしたアルゼンチンの郊外は、北海道を連想するような区画に分かれていて、農地と湿地と住宅街が広がっていた。サンパウロのモザイク状とは対照的に感じる。
到着した空港には、奥のほうに行くと羽田空港の国際ターミナルのような新しい建物があるのだけれど、俺たちが降り立ったのは昭和っぽいレトロなデッキだった。
荷物と機材を降ろして、現地のスタッフと合流。バスでホテルへ向かった。が、なんと、週末に大統領選挙を控えたブエノスアイレスでは各地でデモが行われているらしく、空港付近の高速道路は大渋滞。仕方がないので、運転手は下道を選択して、渋滞部分を迂回することになった。
下道に降りても、国道のような道路は渋滞していた。現地のドライバーは運転がとても荒く、歩道を第三の車道のようにズイズイと進んでいる。反対車線を我が物顔で走っている車もあって、なかなかのカオス。そうしていると、我々のバスの運転手は業を煮やしてローカルな側道に入っていったのだった。ここからがかなりスリリングだった。凸凹の道には小屋なのか家なのかわからない薄い屋根の建物がたくさんあって、犬などが歩道に放し飼いにされている。日本の小綺麗な住宅街とは真逆のようなパンチのある風景にとても驚いた。国道にまた戻ってからの風景も北斗の拳を一瞬想起するような風景で、やはり犬たちがフラフラと町中を闊歩していた。それでも、行き交う車は結構真新しい外国車があって面白い。走りながら崩壊しそうなオンボロ車もたまに見かけたけれど、建物の割に車にお金がかかっているような印象を受けて、興味深かった。
そのような、見たこともない街並みを抜けてバスは高速に戻り、予定していたより数倍の時間を費やして、ホテルに到着。中心部に近づくにつれて、高いビルが増えたけれども、とにかく古い建物が多い。ブラジルは現代的なコンクリートとガラスのビルがたくさんあったけれど、ブエノスアイレスはもっと雑多でレトロな感じがする。町中に犬のクソとタバコの吸殻が落ちているけれど、しばらくするとそれも当たり前のように思えてくる大らかさがある。そこら中の壁にグラフィティや落書きがある。これはサンパウロに似ているけれど、サンパウロよりも落書き感が強い。不思議だ。
ディナーはトラディショナルなアルゼンチン料理のお店へ。数多くのサッカー選手たちのユニフォームが飾られたレストランは、本当に何を食べても美味しかった。潔が選んだワインも濃厚で素晴らしかった。ことワインについては、潔の選択に従っておけば外れることがない。やるなぁ、潔。チリでの体調不良以来久々に、のんびりと楽しい食事をすることができて嬉しかった。
食後はホテルまで歩いて帰った。タンゴ発祥の地と言われている一角を散歩しながら帰ったのだけれど、夜空と街並みのコントラストが美しくて感動してしまった。美味しいワインのせいで酔っ払っていたせいもあるだろけれど、とにかく開放的な数十分だった。
アルゼンチン大使館では、「とにかくかっぱらいが多いので気をつけろ」と治安についての忠告を受けていた。かっぱらいという表現を久々に聞いて驚いたのだけれども、おそらく、場所が場所ならば危険な目やかっぱらいにも会うのかもしれない。でも、俺たちが闊歩したあたりは危険な雰囲気もなく、ハードルを変に上げられていたころからくる安堵が、あるいは旅情を美しくさせたのかもしれない。きっと生涯忘れることはないと思う。
コントラストの強いいくつかの風景を見ることができて、とてもいい1日だった。直感だけれども、ブエノスアイレスの街が俺は好きだと思った。