欧州〜南米ディレイ日記 7
カテゴリ:日記

 

 11月11日。パリからチリのサンチエゴへの移動日。夕方の空港チェックインまで時間があるので、メンバーとパリ市内を散策した。

 

 この日は俺の第一志望のピカソ美術館へ。アジカン一行の観光ツアーの場合、美術館や博物館は除外されてしまい、結果、ひとりだけ別行動せざるを得なくなるのだけれども、今回は俺のプランが採用されて嬉しかった。ひとまず、ピカソ美術館の近くまで移動して、美味しいランチを食べた。

 

 

 ピカソ美術館はとても良かった。収蔵されている作品が豊富だし、年代別にテーマを分けて展示してあったので、例えば青の時代や、緑色を多用する時代、キュビズム、スペイン内戦の頃の精神状態を反映した作品群、など、多面的にピカソを鑑賞することができた。

 

 

 写真撮影が可能というところも素晴らしい。公共財という考え方なのだろうか。こういう流れは日本でも広まって欲しいけれども、日本で行った場合はいつもの「マナー論争」に着地して、観客同士がいがみ合うだけになってしまうかもしれない。ただ、こうして撮影が許可されることについては、俺はポジティブに考えている。SNSで語り合うことが当たり前の時代なわけだし、知的財産が広く共有されるためのきっかけになると思う。

 

 

 コンサートにしても美術館にしても、その場でしか感じることのできない魅力が大部分を占めている。写真におさめたくらいでは生身の体験の価値が削がれたりはしないだろう。残るハードルは撮影する側のマナーの問題で、そのあたりは確かに一考するべきだとは思う。撮ることにも慣れないといけないし、何より、撮影している人間が自分の隣にいることに慣れないといけない。そのあたり、大雑把に分けてしまうけれども、欧米の会場では皆が奔放だ。まず自分ありきで、良くも悪くもキョロキョロ辺りを見回して何かをしている感じがしない。やりたいからしている、という個人的な主張がまずあるのだと思う。日本の場合は協調性があるとも言えるし、逆に周りを気にしすぎているようにも感じる。自分のことも縛るし、他人のことも、ある場面では自分以上に縛る。その場で抗議しないで、ネットで書いたりするところも日本的なのではないかと思う。本当に、大雑把な一般化で申し訳ない書き方なのだけれども。

 

 スタッフのジュリアンが待機していた通りに戻ると、車のバッテリーがあがって立ち往生していた。このツアーで2台目の故障。車運の悪さを嘆きつつ、代車が来るまでしばらくキヨシとお茶を飲んだ。少し肌寒くもあるけれど、秋のパリのテラスで飲むエスプレッソは美味しかった。洒落とるなぁ、と思った。

 

 

 代車が到着したので、デパートのあるような場所に立ち寄ってから、空港へ移動。空港ではちょっと不思議なペースで仕事をする職員に当たってしまい、荷物のチェックインにえらい時間がかかった。男性職員は「手伝わっか?(静岡弁)」という同僚たちの親切心を跳ね除けながら信じられないほど遅い速度で我々のチケットを処理して、案の定その仕事ぶりはダメダメで、結果、スタッフのトランジットのチケットも発行されないし、楽器などの機材はバラバラで乗り継ぎのサンパウロで大揉めという惨事となった。

 

 いや本当に、日本の空港会社は素晴らしい。働きっぷりに関して言えば、日本は世界で随一ではなかろうかと思う。ただ、顧客満足度が高いということはある意味で、それだけ奉仕している、ものすごい熱量で仕事に打ち込んでいるというわけで、そういうところが社会全体の「働きすぎ=過労」につながっているのかもしれないとも感じた。最高のサービスの裏には、それなりの理由と苦労があるというか。自分が顧客のときには、あまり求めすぎないようにしたいなぁと思った。フランスで俺らを担当した阿呆職員には一度日本で研修して欲しいけれども。

 

 

 サンチエゴに向けて出発。まずはトランジットでサンパウロへ。長旅。

 

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