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稲川淳二の怪談を何度か海の家で見たことがあるけれど、怖いというか、とても面白かった。あの語り口はなんだか真似したくなる魅力があるので、帰りに立ち寄った居酒屋で、稲川淳二口調でついつい会話してしまう。
稲川淳二の怪談の場合、例えば「私の友人の話なんですがねぇ」から始まる話の主人公は、途中で「なんかおかしいなぁ」と異変に気がつく。例えば、田舎道を行く道すがら、あるいは古民家の玄関を開けた瞬間などに、なんとなくヤバイということに気がついている。で、まあ、怪談だから、そこから進んでいくとドエライ目に遭うぞと会場の誰しもが分かっているのだけれども、本人は会場の期待通りにずんずんと進んでいくのである。で、実際にドエライ目に遭う。
「嫌だなぁ、嫌だなぁ」
と毎度言いながら、ポイント・オブ・ノー・リターンを踏み越えて行く。なんであそこで引き返さなかったんだろうっていう。