『Wonder Future』 全曲解説 #7
カテゴリ:全曲解説

 

 今回の全曲解説は7曲目の「Standard/スタンダード」です。残り少なくなってきましたね。ツアー開始までに解説が終わるのか不安ですけれども、最後まで頑張ります。では、以下、解説です。

 

 

 

ふぐたん

気合いの更新ありがとうございます!スタンダードは何回聴いても新鮮な気持ちになれます!ギターの音が人の声の様に聞こえるのですが気のせいですか?

 

気のせいですね。笑。

 

でも、脳科学と音楽の本で読んだんですけれども、日本人は音を言語的に処理するそうなんですよ。例えば、セミの鳴き声なんて、西洋の人たちにとってはただのノイズだそうなんです。「ミーンミーンミーン」と僕たちは擬声語に変換しますが、ASHのティムは「BUGS WAR!!!」だと言っていましたからね。笑。

 

落語とか、歌舞伎とか、文楽とか、もっと遡って琵琶法師でもいいですけれども、「語り物」を楽しんできた日本文化っていうのが、日本語という言語に張り付いているんだと思います。さらに遡って、詠歌なんかもそうですよね。だから、多くの人は歌詞の話が好きだし、メロディが好きなんだと思います。

 

一方で、サウンドやビートについては、後回しになってしまうのかなと感じています。訓練すると違いが分かるようになるんですけれども。

 

外国人と録音作業をして思うことのひとつは、聞いている音声の帯域が違うんじゃないかってことです。SやTやTHなどの子音を、彼らは小さな音でも聞き分けていますから。これは普段使っている言語の違いに起因しているはずです。

 

 

 

LW@アジカン福岡

解説楽しいです 以前コーラスについて、増えると丸みをおびると仰っていましたが、スタンダードをはじめ、コーラスによって凄くエッジが効くと言いますか、凄く感情が増すように伝わりました。聞きての捉え方でしょうか?

 

僕はコーラスを重ねていくと、曲がカラフルになると感じています。そういえば、アジカンの作業なんかでも「色塗りすぎ」みたいな言葉をよく使いますね。大抵、あまり音階を増やしてほしくないときに使うのですが。

 

そういった色の塗り方で「感情が増す」という効果は確かにあると思います。もちろん、それを狙ってコーラスを重ねて録音しているので。ただ、「エッジ」という表現となると、「エッジ」の意味をどう捉えるのかで個人差がありそうですよね。

 

 

 

 

 

このあたりの曲がパッとコーラスが印象的な曲として思い浮かびました。荘厳だったり、カラフルだったり、印象はぞれぞれですね。でも、人間の声が重なったときの効果って、確かにあるんだなぁって感じます。僕はそういった効果がとても好きです。

 

 

えんも

サビの?「少女は」のところ、どうしても「しゃーこらぁー!!」と聴こえます(私がそう歌いたいだけなのかもしれないですが笑)でも、そういう気持ちが歌い方にでてるのかなと、そんなことはありませんか?

 

ありません。笑。

 

 

「しゃーこらぁー!!」に関する動画がなかったので、こちらの動画をどうぞ。

 

 

いち( °д°)

ナノムゲンでの曲をアルバムに入れたのは何故でしょうか? その頃からWonderFutureのアルバム作成をイメージしていたのでしょうか?

 

ナノムゲンコンピの曲をアルバムに入れてはいけないというルールはないですよね。笑。過去に「ブラックアウト」という曲もコンピからアルバム曲として採用されました。どちらも、そのときに作っていたアルバムに欠かせない曲だったんです。

 

 

実は「スタンダード」を作っているときに、『Wonder Future』の構想を閃いたんです。この曲の歌詞を読んでもらうと分かると思うのですが、「僕」も「君」も出てこないんですね。三人称だけで書かれているんです(自分で書いたんだけれども)。そういう方向性でアルバムを作れば、ユニークな作品に仕上がると思いました。自分の思っていることや感じていることを語るのではなくて、物語に寄せたいと考えたんですね。今回のアルバムはそんな意図をもって制作されました。そう言われると、歌詞に対する印象が何だか違ってくるような気がしませんか?笑。



ミドリ

ナノムゲンver.と比べると力強い印象で、さらに背中を押してくれる曲になった気がします。このアレンジはアルバム内のバランスを取るためですか?それとも、本当に鳴らしたかった音が今回のレコーディングで実現したのですか?

 

端的にL.A.のスタジオで録音し直したことが「力強い印象」につながっていると思います。素晴らしい機材で録音しましたから、音もパワーアップしています。ドラムもベースもギターも録音しなおしてあります。ボーカルと薄い膜のように鳴っているギターノイズに関しては、コンピのときの音をそのまま採用しています。

 

あとは、ギターのトラック数が増えていますね。アメリカに行って驚いたのは、録音されたドラムの音の迫力でした。「デモ通りのギター・プロダクションではこのドラムの音に敵わない」と僕と建さんは考えました。それで、いろいろ話し合って、コンピの音源よりもギターを重ねて録音してあります。

 

 

いちこ

この曲の後藤さんの力強い歌声が好きです! そして歌詞も好きです!!歌詞の内容とかはメンバーと共有したりするのですか?それとも、曲が完全に出来上がるまでメンバーは歌詞の内容は知らないままですか?

 

昔は、メンバーは歌詞については我関せずという態度でした。でも、いつからか、ちゃんと読んでくれるようになりましたよ。僕も、見せられる段階になったら、みんなに渡すようにしています。

 

『ランドマーク』のときは随分歌詞に悩んで、ときにはメンバーに相談することもありました。「ちょっと書きすぎかな?」なんて尋ねてみたりもしましたね。なにしろ、状況が状況でしたから。そんな中で、潔が「もっと踏み込んで書いていいんじゃないか。こういうことを歌にできるのはゴッチくらいだから」と言ってくれたことは一生忘れないと思います。「お、おう!」ってな感じで、面食らいましたから。笑。

 

 

oreoreore

イントロのドラムとギターでのダダッダ  ダダッダ 最高です あれは喜多さんとキヨシさんがイチャイチャしながら作ったんでしょうか?またサビの少女は の叫びはいつ聴いても鳥肌が立ちます ゴッチさんも自分の作った曲で鳥肌立つことはありますか?かなり興味深いです

 

イチャイチャしていたと思いますよ。笑。最近ではテンポ感について建さんが潔に叱られていることが多いですけれども、イチャイチャの一環でしょう。

 

僕も鳥肌立ちますよ。何度歌っても、この曲は無意識に身体なのか心なのか魂なのかが反応して、毛穴がキューっと収縮します。泣きそうになるときもあります。

 

 

こんな曲が作れて幸せです。あんまりヒットしなかったけれど。笑。

 

 

정은주(Eunju Jung)

ブリッジ前で「う〜あぁ〜ただ歌〜った」と即興的に歌ってらっしゃるような所と途中に積み上げていくコーラスもとても素敵だと思いました。そして音像から少しjonsiのソロの1stが浮かびました。jonsiの影響だったりしますか?

 

Jonsiからの直接の影響ではないですけれども、Jonsiのことは大好きです。2000年代の後半、もっとも僕が影響を受けたのはSIGUR ROSと言っても過言ではないですから。

 

 

 

彼のファルセット(裏声)は本当に美しいですよね。

 

 

市川 智

少女の願いはスタンダードになったはずなのに、変わらず風変わりな対象として見られていると言うところが、本質と大衆化されたものとの乖離を表しているようで好きです。後藤さんは、スタンダードであると言う、ある種統一的なものさしのようなものが社会に必要だと思いますか?

 

スタンダードになるような何かを生み出したひとが、必ずしもその功労者として語られるわけではないように思います。オリジネーターではなくて、それを広めたひとがもっとも評価されることもありますしね。でも、いつだって、最初に始めたひとは偉大です。たとえ歴史に残らなくても。

 

僕の友人が昔、「アジカンがやっているのはポピュラーミュージックだけれど、いつかジャズやクラッシクのように、スタンダードミュージックになったらいいね」と言ってくれたことがあります。当時の僕らにはそういう発想がなかったですから、ハっと目の覚めるような思いでした。

 

果たして「ものさし」があるのかは分かりませんが、時間という無慈悲な審判に耐え得るものこそ、スタンダードになるんだろうと考えています。「今週売れた」とかではなくて、スタンダードなものは即時的ではない評価や支持を取り付けられた何かなんだと思います。

 

 

 

つうことで、7曲目までの解説が終了。次の曲は「Wonder Future/ワンダーフューチャー」です。引き続き、Twitterで質問を募集しますね。6月29日。

 

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