『Wonder Future』 全曲解説 #6
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 さて、気合いのみで更新しています、全曲解説もついに半分を越えまして、今回は6曲目の「Planet of the Apes/猿の惑星」です。楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 

宇多田

猿の惑星だけでなく今回のアルバムの作品は後藤さんはパワーコードが多いですよね。迷子犬辺りからローコードを使うようになって、今回のアルバムではパワーコードを多く使う。その変化にはやはり原点回帰と関係があるのでしょうか?

 

原点回帰とは関係ないですね(そもそも『Wonder Future』原点回帰のアルバムではありません)。笑。

 

『Wonder Future』の曲でローコード(というかパワーコード以外)を使っているのは、「Caterpillar」と「Signal on the Street」と「Wonder Future」と「額の中の囚人」ですね。4曲もあるじゃないですか。笑。

 

前にもどこかで書いたんですが、パワーコードって便利なんですよね。ルートと5度の和音だけで構成されているので、音がゴチャつかないんです。何しろ、ギターがふたりいますし、その一方は調性を無視して勝手に弾いたりしますので。笑。3度を弾かないってだけで、随分と抜け道が増えるように感じて、慣習としてパワーコードの曲がアジカンでは多いですね。バッキングギターで厚みを加えながら、かつ疾走感も出したい場合、特に重宝しています。抑えるのが簡単だからっていうことで多用しているわけではないんですよ(まあ、数十%はあるけれども。結構多いな。笑)。

 

あと、アジカンの曲の多くは、建さんが歌のメロディに対して、カウンターメロディを弾くことが多いので、そういう場合はバッキングのコード進行の段階でテンションの音が鳴っていないほうが自由になれるんですね。

 

とはいえ、曲を作り始めた頃はパワーコードなんていうものがあるのを知らなくて、ずっとローコードだけで曲を作っていたんです。「なんかアメリカのバンドみたいに勢いが出ないなぁ」なんて思っていたんですが、あるとき友達にパワーコードの押さえ方を教えてもらったんです、オクターブ奏法も一緒に。本当に革命だと思いましたね。これはもう何百曲でも作れるぜ!とか思いました。

 

 

RN  あいす ここあ

毎回全曲解説、新しい発見ばかりで読んでいて楽しいです。  イントロの感じが 未来の破片 を感じさせる気がします。意図的ですか?  コード進行などの音楽の知識が皆無なので不快な想いをさせてしまったらごめんなさい。

 

不快な想いは微塵もありませんので、ご安心ください。笑。

 

「未来の破片」は変わった曲で、ギターの開放弦を6弦から順に下に向かって3弦まで鳴らすのと同じコード進行なんですね。ルートはE→A→D→Gです。で、「猿の惑星」はA→D→G→Cという進行です。

 

 

なんだ、全然違うやんけ。と思うかもしれないんですけれども単純化してしまえば構造がほぼ同じなんです。キーや譜割りなど、いろいろと違うんですけれども、似ているとも言える。なので、鋭い耳をお持ちだということになると思います。僕も、問われてはじめて、そういうことかと気がつきました。笑。

 

 

 

まあでも、コード進行なんてのはそんなものですよね(言い訳じゃなくて)。メロディに対して、別のコードを当てることだってできるんですよ。リミックスとかではよくある手法ですから。

 

 

わいるど@7/4決戦の日

『猿の惑星』のMVは、Weezerの『Back To The Shack』のMVに似てますが、オマージュされているのでしょうか?

 

 

MVについては飯塚監督にお任せしたので、weezerへのオマージュかどうかは分かりません。どうなんでしょうね。特に、そういう話は打ち合わせのときにも出ていませんでしたし。

 

 

宇宙ってだけじゃないかと思うんですけれども。笑。アジカンのビデオのほうがアホっぽいですよね。あはは。

 

 

ENAN

やる気のない月曜日に聴きまくってる曲です! エフェクト?のせいか、息づかいがよく感じられます。他の曲にもいえることかもしれませんが、ブレスの位置とか歌うときに気にしていますか?

 

リズム良く息を吸うことができれば、リズム良く歌えるようになると思います。案外、吸うことを疎かにしてしまうんですけれども、大事なんです。ただ、歌の下手なヤツ(僕です)がこれを語っているところが、説得力に欠けますよね。

 

「息を合わせる」っていうじゃないですか。あれ、本当に呼吸のことなんですよ、多分。だから、息が合ってるバンドって、呼吸が揃っているんです。なんらかのアルゴリズムに基づいて、(実際に吸ったり吐いたりするタイミングが揃ってなくても)同期しているはずです。

 

ソロでmabanua君というドラマーと一緒に演奏しましたけれど、彼は僕のブレスを気にして叩いてくれました。そうするとやっぱり、息が合ってくるんですよ。僕は奔放に自分のタイミングで吸ってたんですけれども。笑。

 

 

水玉なおくん

この曲をカラオケで歌ったら「猿の惑星の主題歌なの?」と友人から聞かれました。永遠の陽光のようにこの曲も少なからず、映画「猿の惑星」からインスピレーションを得たりしたのですか?

 

この曲もイメージと語彙の井戸が枯れかけていた時期の曲で、もうどうしようかなぁという感じだったんです。で、L.A.に行く飛行機の中で、暇つぶしに映画を観まくっていたんですね。その中の一本が『猿の惑星 新世紀』でした。でも、なんというか失礼な話なんですけれども、時差を調性するために頑張って起きながらの鑑賞だったので、途中で猛烈な眠気に襲われてウトウトしてしまいまして(映画が面白くなかったというわけではくて)、気がついたときにはもう取り返しのつかないくらい話が進んでいました。笑。

 

 

なので、映画全体からのイメージというよりは、本当に断片的なモノとしてインスピレーションを得たという感じですかね。本当にもう空っぽという状況でしたので、こういうちょっとしたインプットも逃せないって感じでした。

 

あとはもう、一行目が書ければ、こっちのものなんです。書き出すまでが勝負なんですね。

 

で、まあ、歌詞の中に「猿」が出でくるんですが、映画の中の「猿」について書いたわけではないんです。僕らも含めて、広義の「猿」というか。比喩としての「猿」は誰のことなんだろうという問いも含めて、使っているわけなんですけれども。

 

 

クル←リン

この曲に限った話では無いのですが、イヤホンで聴いた時の左右のギター音って建さんとゴッチどっちがどっちなんですか?個人的には左がゴッチっぽく感じるんですけど。

 

この曲は右側の音程の高いギターパートがマルッと建さんですね。僕のギターは左側だと思われがちなんですけれども、実は右側にも同じパートをうっすらと重ねてあります。

 

ギターに関しては、建さんの強いこだわりで「右側が俺やろ」という主張を受け入れていたんですけれども、「ローリングストーン」あたりからその法則は崩れています。

 

 

この曲は、いきなり左耳から建さんのギターが鳴りますよね。

 

なんでも、ライブの時に自分が客席から観て右側にいるので、自分のギターの音を右のスピーカーから出したいのだ、ということでした。最近、お前は左側にいるじゃねえか!というツッコミを入れたい気持ちもありますが、グっと堪えて飲み込みましょう。笑。

 

 

 

石井久允

アウトロではなんと言っているのでしょうか?個人的には最先端の端を言っていると思っているのですが実際はどうなんでしょうか?

 

「ダウン」って連呼しています。「最先端の端を」って聴こえます? またしても自分の滑舌の悪さが悲しくなってきました。涙。

 

 

みゅー@Wonder Future

この曲は2分12秒と短いですが(ディスではありません)、曲の長さはどのように決まるのですか? 短いフレーズがあって、それをどんどん膨らませようとする曲と、コンパクトに纏めようとする曲とで、違いはありますか?

 

「曲は短い方がエライ」という格言がありますが、別に偉人が発した言葉ではなくて、アジカン内だけで通じるルールです。笑。言い出したのは俺かもしれません。

 

何か足りないという気持ちを満たすようなアレンジや展開を見つけるのは大変なんですけれども、格好いいリフがすでにあるのならば、曲を長くするのはそんなに難しくないんですね。まあ、いくらでも付け足していけば良いわけで。多くのミュージシャンたちは、なんならずっと演奏していたいと思っているような人間たちなので、延々間奏でセッションを続けてしまいます。曲が終わらない。笑。

 

一方で、無駄を削いでいくことって難しいんですよね。無駄だと分かっているならいいのですが、「この部分は無駄だ」って自分たちで判別するのはとても難しいんですね。ここ削りたくねぇって思ってしまうので。ザバっと削るときこそ、技量を問われているような気がします。

 

最近では、なるべくシンプルに、少ないアイデアで曲を最後まで持っていくことを心がけていますね、アジカンでは。そういう曲を目指すことで、メロディや、リフや言葉といった骨格の部分に強度を要求されるようにも思います。肉付け前の段階で、どれだけいいものを作れるか、というような。そんなことを4人で考えながらセッションしています。

 

 

猪股ヨウスケ33歳

ギターとベースはリフのコードチェンジの時に半拍くって変わっているけどドラムはバスドラくわないでドドダン、ってなっているのは色々試した結果そうなったのですか?気になって昼夜逆転生活が治ってしまいました、ありがとうございます。

 

Dr.DOWNERのメンバーと集まって(違うバンドでもいいけど)、コードチェンジとドラムのアクセントを揃えてコピーしてみてください。すんごい格好悪いので。笑。揃ってりゃ格好いいってもんではないんだなぁと、感じるはずです。笑。

 

つうか、猪股、それは潔に直接聞けよ。笑。一緒にバンドやってるんだから。笑。

 

 

こちらの動画は猪股と潔がやっている「テクい」バンド、フォノトーンズです。僕の日記の読者の皆さんは僕のソロのほうを応援してください。笑。 

 


ジョウ

ギターのリフはもしかしてグリーンデイの“アメリカンイディオット”を意識されて作ったのですか??

 

 

率直に、意識していません。どんなリフだったっけなぁと思って、聴いてみたんですが、まあ、似てると思いきや、そんなに似てないシリーズじゃないですか? 「猿の惑星」のイントロパターンはコード4つのシンプルな構成なので(「アメリカン・イディオット」はコード4つじゃないですけれど)、探せば世界中に似ている曲があると思います。笑。

 

そういえば、何年か前に英会話を教わっていたアメリカ人に、「アジカンはグリーン・デイに似てる」と言われました。えー、weezerとかじゃないの?と思ったんですけれども、彼からすると「サウンドがグリーン・デイみたいでクールだ」とのことでした。だからなんだよ、って言われたら、そんなことがあったってだけの話なんですけれども。笑。

 

 

クボタサキ

猿の惑星の拡声器を通したみたいなエフェクトがかかってるボーカルが好きです。この効果でフィルターがかかって、ブラウン管の向こうのニュースみたいな他人事な感じをわざと強めてる気がするのですが…考えすぎですかね…

 

こういう深読みも本当にありがたいです。「そうなんです!」と言いたいとことなんですけれども、そこまで込み入った印象について考えたわけではないですね。

 

「拡声器を通したみたいなエフェクト」をかけたのは、言葉やメロディや音像が、そういうエフェクトを要求したからです。この言葉で、このメロディで、この音像を、こんな気持ちで演奏するならば、ボーカルは歪んでいなければいけない。そういう直感がありました。

 

マイクを咥えるようにしてデカい声を出したら、同じように音声が割れて歪みます。そういうことです。「N2」という曲でも、同じようなエフェクトがかかっていますよね。

 

ちなみに、この曲のデモ音源のときの借りタイトルは「N3」でした。3秒で作ったので(そのくらい簡単にという意味で)、「N3」なんですね。そして、「N2」は「2秒」という仮タイトルでした。この場合の「作る」は、コード進行や構成までのことですね。歌詞については含まれていません。2〜3秒では書けません。涙。

 

 

 というわけで、次は7曲目の「スタンダード」ですね。またTwitterで質問を募集しますね。

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