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全曲解説。今回は「Little Lennon / 小さなレノン」です。全部の質問には答えられないですけれども、たくさん送ってくださってありがとうございます。
nemi
個人的にWonderFutureの中で一番好きな曲です。ゴッチはなぜこの曲をアルバムの1番最初に持ってきたかったのでしょうか??
単純に、身も蓋もなく「この曲が好きだ」という気持ちが大きいですね。そして、この曲の「さあ イメージ」から続くセンテンスが『Wonder Future』の核だと僕は思っているので、最初にズバリと歌ってしまうのが良いのかなと思ったのです。このアルバムに書かれているのは、現実とどこかが繋がったり似ていたりする架空の街なんです。喩え話、つまりフィクションですね。そういう曲がこれから続きますよ、と、最初に宣言したいなぁと思ったんです。でも、「復活の報告」をするほうが先だろという判断になりました。笑。
*Sa*tomi
「四万年だって」からのラウドとライトとラブの音の重なりが心地良いです。先に音の重なる言葉を選んでから、他の歌詞を決めているのでしょうか?それとも書き進めるうちで出てくるものですか?
一定間隔で同じ響きのする言葉を使っていくことを「韻」というのですれども、この場合は「ラ(ア)」で頭韻を踏んでいますね。また、「ト(オ)」の脚韻も踏んでいます。このあたりは経験的なテクニックなので、最初の「ラウド」が決まった時点で脳内の語彙の中からふさわしい言葉を探します。優先されているのは音なんですね。同じ音が繰り返されると気持ちが良いんです。本来、詩歌というものは発語されることも目的のひとつでしたから、伝統的に、この韻を踏むという行為が存在しています。詩は「韻文」とも呼ばれます。
例えば、リライトだって「消して」「リライトして」「起死回生」など、サビの前半部分のシャウトは「エ」の母音で統一してあります。試しに「リライトした〜」で歌ってみてください。むちゃんこ気持ちが悪いですから。笑。
そういう「音=韻」に縛られながら、歌詞を書いています。
mayudade
ンーチャンチャンッ ンーチャンチャンッ ンーチャンチャンッ ンーチャンチャンッ っていう始めのギターがクセになってめちゃ好きです。この曲は何が最初にできたんですか?ギターのンーチャンチャンッは後からできたんでしょうか?分かりにくい表現ですみません。
それは建さんが弾いているギターリフですね。半音ずつ下がっていくのが印象的なフレーズで、実はこのリフから曲を作ったんですね。元ネタを出したのはベースの山ちゃんです。このリフをあまりに推してきたらしく、「Yama_gorioshi」という仮タイトルが建さんによって付けられていました。メールでデモ音源を受け取ったときに驚きましたから。笑。なんかヤバい曲なのかなって。
僕以外の3人で骨組みとなる部分を作ってもらって、その後で、4人でセッションして曲は完成しました。メロディとブリッジ(四万年〜のくだり)は僕が書き足しました。でも、おそらく最初から僕の声とキーを考えて、サビで爆発するようにコード進行がコントロールされています。このあたりは、山ちゃんがそういうことをちゃんと考えて元ネタを作っているんだと思います。さすがですよね。
まん が
「さあ、イメージ イメージ」という歌詞は、ジョンの「イマジン」に通じるものがあると思いますが、アジカンはビートルズの影響を受けたりはしてるんですか?今回のアルバム・ジャケットはホワイトアルバムっぽい感じを受けたりしました。
冒頭の「さあ イメージ」という歌い出しの英訳は「Now imagine」としました。タイトルから考えて、影響を受けてないとしたらなんだんだという話ですよね。笑。
ビートルズはロックバンドのひとつの理想形ですよね。僕らがはじめてのライブのときに演奏した曲は、ビートルズの「Help」とOasisの「Live Forever」でした。あとは拙いスリーコードのオリジナルも一曲。そして、思い起こせば僕が山ちゃんをバンドに誘うきっかけになったのも、飲み会で「どんなバンドが好き?」という質問に山ちゃんが「ビートルズ」と答えたからなんですね。違うバンドだったら、誘っていないかもです。笑。
ちなみに、Oasisはビートルズからの影響を公言しているバンドです。アジカンはOasisの影響を色濃く受けているので、まあ、繋がりがありますよね。僕はOasisの曲を練習しながら、曲の作り方を学びました。ノエル・ギャラガーのコード進行が基礎になっています。なので、add9とかsus4とかを多用してしまいます。ほとんど癖です。笑。
サウンドに関しては、ビートルズからの影響がそれぞれのアルバムにありますので、調べてみてください。ちなみに『ワールド ワールド ワールド』は『サージェントペパーズ〜』を明確に意識したエンディングになってます。中期のサイケデリックなビートルズからの影響が一番強いかもしれないですね。
ジャケットにもビートルズを連想させるものが中村くんの手によって散りばめられていたりしますので、探してみてください。
ナカタ
2回目の間奏の逆再生したような声はなんですか?
ズバリ、逆再生した声です。笑。自分の作業場で録音しました。
nakabot
リトルレノンに限らない話になってしまいますが、この曲の作曲者は後藤さんと山田さんのお二人となっています。このように共作の場合、一人で作るときと、どのような違いがあるのでしょうか?
大雑把に言えば、アジカンではリフやコード進行などの元ネタを持ってきたメンバーが作曲者としてクレジットされるということになっています。なので、共作と言ってもふたりで膝を突き合わせて作っているわけではないんですね。
今回のアルバムで言えば、僕の単独でのスタジオ作業と、僕以外の3人でのセッションというチーム分けで、それぞれ原曲を作っていました。「Little Lennon」の話をするならば、僕以外のメンバーが山ちゃんのアイデアをもとにワンコーラス分の土台を固めてもらったところで、僕がセッションに参加して曲を広げていくというスタイルを採用しました。
自分以外のひとのアイデアが源泉になっている曲は面白さと難しさの両方を感じます。どうやっても肌に合わない、みたいなこともお互いにありますし。笑。ただ、良い方向に転がると、自分ひとりでは思いつかない場所にたどり着くことができるんですね。それがバンドで音楽をやる醍醐味なんじゃないかと思います。
いけだぽ
リトルレノンを聞いた時、原点回帰のようなイメージを持ちました。ロックという音楽をこの時代に鳴らす理由を探し続けた結果の原点回帰なのかなと。ということで、私もアジカンの原点「遥か彼方」を聴いてみました。「遥か彼方」の歌詞に「塗り潰すのさ、白く、白く」という歌詞がありました。今回のジャケットが白くて、原点回帰の作品で。この繋がりって偶然ですか?
大分深く読んでいただいてありがとうございます。全部そうだよとは言えないですけれども、全部違うとも言い切れないですね。ぐへへとスケベな笑い顔をしながら「ご想像にお任せします」と、スルーしたいと思います。
ただ一点、「原点回帰だ」と言われると、天邪鬼な僕は「それは違いますよ」と言いたくなってしまいます。笑。ラウドな音像が初期の作品を彷彿とさせるのかなと思いますけれども、『崩壊アンプリファー』の地点から眺めたら、ちゃんと「遥か彼方」まで来れたんだと自負しています。もちろん、当時の気持ちを忘れたことはないですけれど。そして、僕たちは最初のアルバムから、というか結成当時から、ずっと地続きなんです。これを読んでくれている皆さんの心と身体が生まれたときから自分のものであり続けているように、楽曲というのは骨や肉みたいなものなんです。どこかに保存しておいて、調子が悪くなったので戻すみたいな、機械の部品のようなものじゃないんですね。だから、原点というのは、身体の一部なんです。回帰も参照もなにも、変わらずにそこにあるものなんです。僕はそう考えています。「面倒くさいなぁ、この人」って思うでしょ。笑。
でも、ファーストアルバムが好き!という人たちに喜んでもらえるのは、とても嬉しいです。
ふぐたん
リトルレノンの曲の頭で、ゴッチさんが弾いているバッキングとイースターのリフの音階?が同じなのは、何か意図があるのでしょうか?
両曲ともに解放の4弦、Dの音を鳴らし続けていますので、そのことですよね。それについて、特別な意図はないですよ。たまたまルートの音が一緒だったというだけで。アレンジが似とるやんけという批評は受け入れたいと思います。笑。
この2曲は製作時から繋がりがとても良いと感じていたので、続いた曲順でアルバムに収録することを意識して作業していました。
K'z
なぜタイトルが「小さな」なんですか?大きくてもよかったと思いますよ!
「大きなレノン」だなんて大風呂敷は広げられないです。笑。まあ、様々な場所に「小さなレノン」の登場を願う歌なので(「途絶えてしまった」とか歌っていますが)。
青井てっぺ
抽象的な数字「四万」「五千」「百」「ニ 三」が出てきますが、言葉自体と音の響き、どちらを優先させていますか?影響を受けられている古川日出男さんは直感的に選ばれる数字があるそうです。最近お聞きしたので、後藤さんにも質問してみました。
人類は約40,000年前から音楽を演奏していたのだそうです。言葉を書き付けるようになってからは約5,000年。人間の寿命はどう考えたって100年くらいのものですよね。そんなことを考えながら、言葉を選びました。ただ、「二三年」っていう言葉だけは、確かに直感的に選びましたね。笑。言葉と音の関係については、いくつか前の質問で答えた通りです。
カケ
今回のアルバム、曲間が絶妙ですが特にEasterとLittle lenonの曲間が最高です。このあたりはどんな感じで決まるのでしょうか?あくまで感覚的なものなんでしょうか?それにしても近年稀に見る素晴らしいアルバムです。
曲間は山ちゃんと建さんが中心になって決めています。モニタースピーカーの前にふたりが座って、「ここ!」とか言い合いながら作業しています。僕は後ろでその模様を眺めながら、なんか違うと思ったときだけその旨を伝えています。潔は寝てるか、「早く終わらないかな」と思っているかのどちらかですね。笑。
曲順を決めるのには、サウンド面だけでなく歌詞についての意図も無視できないですよね。でも、曲間は感覚的な気持ち良さがあればいいと思うんです。で、そういうことに関しては山ちゃんと建さんのロックキッズ性を僕は信じていて、彼らがキャッキャしてこそだと思っているんですね。笑。
というわけで、次回は「Winner and Loser / 勝者と敗者」です。面白いですかね、この企画。段々と心配になってきましたけれども、挫折しないように続けます。よろしくどうぞ。6月12日。