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というわけで、『Wonder Future』の全曲解説をはじめます。募集はTwitterで行いました。まずは第一回ということで、「Easter / 復活祭」への質問にお答えします。すべての疑問が解決するかは知りませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ちなみに、サウンドについての質問は答えやすいです。皆さんが知らないことも多いでしょうし、こちらとしても知ってほしいことがたくさんあります。逆に詩についての質問は、「そこは考えて下さい」としか言えないというか...。笑。だって、答えなんてないですよ。テストでもクイズでもないんですから。どう読んでもらえるのかっていうのも、詩という表現にとっては大切なことだと僕は考えているのです。だから、本人に聞くってのは、ある意味で反則だと思っているんです。笑。じゃあ、解説とかするなや!という感じかもしれませんが。でも、もっと的の大きな、センテンスとか単語に固執しない質問には答えられると思います。全体にかかわることであるならば。
では。以下、質問と回答です。
アボさん
アルバムの中で1番最初に歌詞を書いたんですか?アルバムの始まりのような感じがする歌詞とタイトルなので気になりました
最初に書いた曲ではないですね。アルバムの曲で、最初に書いた曲は「スタンダード」という曲です。ちなみに、「Easter」はアルバムの中だと5番目に書いた曲です。『Wonder Future』の制作過程では、たまたま書いた順番で曲に番号を振っていましたので、こうして答えることができました。笑。
同じ理由で曲を書いた順番が分かるのが『ファンクラブ』というアルバムです。ちなみに、こちらは最初に書いたのは1曲目の「暗号のワルツ」です。
sh10r1
なぜ復活祭だったんですか?作詞してたりするときが、復活祭の時だったからとかですか?復活祭を作ったきっかけを教えてください!
作ったときは、正直に言って何にも考えてなかったですね。ポロポロと弾いていたギターリフがいい感じだなぁとは思ったんですけれども、あまりにもサクッとできたので、まさかシングルになるとまでは想像していませんでした。メンバーには「嫌ならボツでもいいよ」くらいのニュアンスで披露したように記憶しています。
ほとんどの場合、曲作りにきっかけとかないんですよね。でも、なんというか、サウンド的には所謂ロック的なアプローチのアジカンって久しぶりだし、「復活じゃあ!」という手応えがアルバムを作っていくうちに芽生えて、その先行シングルに『復活祭』というタイトルをつけたいと思ったんですね。歌詞を書いて、タイトルを考えているときに、ふと思いついたんですけれど。
また、世の中も重たい雰囲気=閉塞感に覆われているように感じますし、そういう空気を払拭するように多くのひとが「復活」することへの願いも込めたつもりです。言葉の選び方の割には案外、ポジティブなメッセージの曲だと思ってるんですけれども、この曲。どうでしょうか。
ダミッポス
個人的に他のアルバムに比べて最もサウンドの違いを感じることができた曲でした。 フーファイターズのスタジオでレコーディングすることで、具体的にどのような変化が得られたのでしょうか。
以前とは何もかもが違うと言ってしまうと、答えにならないでしょうか。笑。
具体的には、まずは音が違います。それは、世界最高峰のロックバンドのスタジオにある機材を使ったということが原因に他ならないのですが…。なにしろ、『SOUND CITY』というスタジオにあった1970年代の伝説的なコンソールを使いましたから。例えば、weezerの『ピンカートン』とか、ニルヴァーナの『Never Mind』などを録音した機材ですので、サウンド面の変化はこれが最大の要因ですね。
で、フーファイターズのスタジオを使えることが決まったあたりから、メンバーの意思疎通がスムースになりました。楽曲の最終的な着地点を考えるのは、バンドを何年やっても難しいのですけれども、今回ばかりはメンバーのビジョンが揃うのが早かったように感じます。僕がスタジオの話をした時点で「そっちね!」みたいにイメージを共有することができたというか。笑。簡単なキーワードって、こういうときに役立ちますね。笑。それからは、曲の構成やサウンドメイキングについても、格段に話がしやすくなりました。
みゅー@Wonder Future
この曲をアルバムの先頭にしたのはなぜですか? シングル曲を先頭にするアルバムをあまり知らないということ、雑誌などを見ているとアルバム作りのきっかけとなったのはスタンダードと書いてあったので気になりました。
僕は『リトルレノン』を1曲目に推していたんです。でも、僕以外のメンバー全員と主要なスタッフたちが「1曲目はイースター!!」という意見だったんですね。そこまで言うなら従わないわけにはいかないでしょう。笑。
ちなみにベースの山ちゃんはこの曲ができたときに「このアルバムはいけるぞ!!」と思ったそうです。「リライト」のヒットをメンバー内でただひとり予見していた山ちゃんの意見ですので、それもまた、尊重しないわけにはいかないんですよ。笑。僕は商売のセンスがないので。
結果、作品的にも骨太な印象になりましたよね。
トミー
そもそもどうしてシングルとアルバムでEasterの音の感じ(こういうのMIXと言うんでしたっけ)を変えたのでしょうか
エンジニアのニックとの作業は初めてだったので、シングルのミックスでは、まだお互いに手探りの状態だったんですね。メールのやりとりだけでは、サウンドメイキングにおいてどんなことを考えているのか、どんなバンドなのか、ということを伝えきれていないように感じたんです。それで、僕はアルバムのミックスに立ち会うために、ニックのスタジオのあるナッシュビルに向かったんです。レーベルにも無理を言って、超のつく弾丸スケジュールでしたけれども。笑。
ニックのスタジオでいろいろと話しながら「Easter」のミックスをやり直したんですね。他の曲のミックスも進めていましたから、ニックも「今ならもっと上手くいく」と言っていましたし。というわけで、自然な流れで、他の曲とのバランスも考えながらアルバム用の別ミックスを作ったんです。
でも、シングルのミックスにも良さがありますよね。コーラスはシングル版のほうが派手で、僕はこのバージョンも好きです。一方、アルバムではギターをグイっとあげているので、若干、コーラスの音量が下がっています。
緑のコンドル
「Easter/復活祭」に限らずタイトルが「英語/和訳」のGotchスタイルですがゴッチの意向ですか?あとなぜそういう風にしたんですか?
特にソロのスタイルに寄せたということではないんですが、そう誤解するひとが多そうですね。笑。
最近ではヨーロッパやアジアで公演がありますし、今年は南米にも行きます。そう遠くないうちに北米にも行くでしょう。つまり、世界中に向けて発信していく必要を感じているし、そういう欲求もあるわけなんですね。僕がバンド名に「ASIAN」だとか「KUNG-FU」だとか付けたのは、アジア人として世界に発信したときにフック(引っかかり)となるんじゃないかっていう野望も含まれていました(中村君にジャケットの依頼をしているのも、同じ理由です。彼の絵なら、外国人旅行客が手に取ってくれるんじゃないかと思いました。また、一緒に世界に出ていけるんじゃないかとも)。
英語だけが世界で広く使われている言語ではないですけれども、こうして英語のタイトルをつけておく意味はあるように感じるんです。例えば、僕は韓国に行ったらCD屋で現地のバンドの作品を適当に買ったりしますけれども、バンド名から曲名からすべてハングルだと読めないんです。まったく手がかりがつかめない。笑。グーグルに打ち込めさえしないんです。どんなに良いと思っても、そこから広げるのってすごく難しいんです。でも、英語表記だと、ちょっとだけ想像したり、調べたりする余地ができるんですね。
そういうことを考えて、今回からアジカンでも英語と日本語の両方を表記することにしました。
ちなみに、歌詞の英語訳は随分前から付けています。『ソルファ』が北米で、『ファンクラブ』がヨーロッパでリリースされたあたりから意識しまして、『ワールドワールドワールド』から正式に封入されています。
いちこ
「このまま墓場で 運動会さ朝まで」っていう歌詞聴いて、「復活祭/Easter」の始まりを感じたと同時に、「ゲゲゲの鬼太郎」を思い出したんですが、この歌詞を書いた時に後藤さんも思い浮かびましたか?
そこに気がついてくれて嬉しいです。ゴーストのことを書いているときに妖怪のことを連想して、そこから『ゲゲゲの鬼太郎』にたどり着いてしまいました。なにしろ、我が家には水木しげる先生の単行本がたくさんありますから。笑。
ちょっと辛辣な歌詞ですから、このくらいの遊びがあったほうが深刻に聴かれないだろうと思ったんですけれども、そもそも『ゲゲゲの鬼太郎』の昔の主題歌を知らない世代もいるんじゃなかろうかと、そんな気もしています。笑。
太鼓
もしかして「イエス」の「復活祭」で歌詞が続いてますか?
これ、とっても鋭い質問で驚きました。
「イエス」って、僕がアジカン殺しを宣言した曲でもあるんです。「繋いで それだけを頼りに 意気込んだ彼らの 屍掻き集めるなら 新しい何かを」ですから、歌詞が。笑。「早くアジカンなんかぶっ殺してしまえ!」と歌っているわけなんです。とかまあ、過去の自分たちの手法に対する決別を歌っています。歌詞には亡霊なんかも出てきます。
そんなことを『マジックディスク』の「イエス」では歌っていましたが、今回の『Wonder Future』で僕らは「復活祭」と題して、原点回帰的なロックサウンドを採用しているわけです。「おー!繋がってる!!」と僕は事後的に(曲を書いて録音したあとで)発見したんですけれども、同じように感じてくれたひとがいて嬉しいです。
はな
質問です!コーラスワークがとても面白いのですが、「気づかないふりで〜」の所のスキャットなど、聴いていると声というよりは楽器として、バックの一部として聞こえてくるのですが、そういう風に意識されて、音域もギター側に寄せたミキシングなどされたんでしょうか?
音域的にはギターと真っ向からぶつかるので、ミックスではギターの音量とのバランスに苦慮しました。シングル版はコーラスがアルバム版よりも大きいですよね。
当初、バンドメンバーに今回のアルバムの方向性を説明するのに僕が使っていたのは「フーファイターズがビートルズの『リボルバー』をカヴァーした感じ」という言葉でした。まあ、サイケデリックな音像にしたかったということなんですけども。笑。で、この部分のコーラスは「ヘルタースケルター」という曲のイメージを引用しています(収録されているのは『ホワイトアルバム』のなのですが)。「しっちゃかめっちゃか」というような意味のタイトルだそうなんですけれども、「Easter」の歌詞にも似たような「しっちゃかめっちゃかさ」を感じていたので、ビートルズのコーラスワークを参考にしたというか。機会があったら聴き比べてみてください。
こういうスキャットの部分には、言語的な意味はありません。「君という花」のアウトロだって同じです。意味はない、けれども口にしてみるとなんだか気持ちいい、そういうことって音楽にとってとっても大事なことなんです。
みっちぇる
Bメロっていうんですかね?最初のサビの後のヴァースの裏で鳴ってるハーモニクスっぽいギターがフーファイターズのONE BY ONEっぽい気がするんですけど意識したんですか?(健さんに聞くべき質問かもしれませんが)
どうなんでしょう。単に建さんがサボっているだけだと僕は思うんですけれども。「お前、楽してんなぁ」って。笑。
この曲、僕のパートは結構忙しいんですよ。普通のギタリストならば役割を変わってくれるはずなんですが、「上手く弾けない」とのことで僕がリフを弾きながらヴァースを歌っています。ここ歌だけだったら楽なんですけれども、ライブが。笑。
ただ、『ONE BY ONE』を連想されたのは鋭いと思います。というのも、ミックスをしてくれたニックは、アルバム『ONE BY ONE』のプロデューサーでもあるからです。アプローチは違うと思いますけれども、エンジニアが同じですから、サウンドに近しいフィーリングがあると思います。ただ、僕らはフーファイターズのモノマネをしに行ったのではないので、そのあたりは注意して作業していましたね。影響はもちろん受けていますけれども。
でも、彼らほどヘヴィではないと思います、アジカンは。笑。
瀧澤
Easterはあのギターリフが印象的ですがあれはギターリフから作ったんでしょうか? それとも土台かできてからギターリフを作った感じですか!
この曲はギターリフから作りました。そして、ほとんど同時にサクッと、1コーラス分の展開を作ってしまいました。そして、途中の「ゴーストタウン〜」のあたりはバンドでセッションしながら付け足していきました。
というわけで、第一回は終了です。次回の募集はまたTwitterで告知しますので、よろしくお願いします。あ、ツアー来てくださいね。6月7日。