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Gotchバンド渾身のライブ盤、『Live in Tokyo』が発売になりました。とても嬉しいです。
俺のソロアルバム『Can't Be Forever Young』は8割くらい自分のスタジオでセルフレコーディングして、一点豪華主義とばかりにシカゴまで行ってジョン・マッケンタイアというミュージシャン/エンジニアとミックス作業を行って完成させたものです。サンプリングやMIDI音源というトラックメイキングの手法に生楽器を混ぜて、人間くさい宅録感を目指したのだけれど、狙い通りに仕上がりました。自分でもとても良いアルバムだと思っています。
で、その『Can't Be Forever Young』を引っさげたツアー。メンバーばドラムにマバヌア君、ベースに元CBMDのタッ君、ギターはリョムソンとターンテーブルフィルムスの井上君。キーボードにシモリョー、コーラスにYeYe(とはいえ、このふたりはマルチにいろいろな楽器を演奏してくれています)。本当に素晴らしい時間でした。本番の演奏はもちろん良かったけれど、楽屋が即興で始まるセッションと笑い満ちていて、とても楽しかったです。何からな何まで、幸せだったとしか言いようがない。アジカンメンバーを含めて、いろいろなひとに感謝しています。
で、今回のライブ盤『Live in Tokyo』。これは渋谷のクアトロで行われたライブの音源をミックスしたものです。かなり生々しい仕上がりですね、笑えるくらい。最近ではコンピューターからの音源をバンドの演奏にかぶせて、完成度を高めるバンドとかも洋楽邦楽を問わず、いろいろな場所で見かけます。エンタメとして考えればある種の誠実さなのかもしれないけれど、これは諸刃の剣で、素晴らしい体験もあれば、面白みを減らしてしまっているように俺の目に映ることもあります。PC音源を使うひとの絶対数が増えているので、まあ、面白いものも面白くないものも増えたとは思うんですが。なんか、それ楽しいかな?って思ってしまうんです、俺は。まあ、これは演奏者としてのエゴや趣味や性癖みたいなものかもしれません。メトロノームに合わせて演奏するなんて窮屈じゃん!みたいな気持ちが、あるんです正直に言って。笑。
まあでも、音楽は人間のやることだから、リズムもピッチもビチっと鍵盤やグリッドに沿っているわけではなくて、適度に揺らいでいます。本来は、そういう揺らぎを楽しむものなんじゃないかなと俺は考えています、揺らがない演奏という技術も含めて。
例えば、バンドが興奮したときにはテンポが上がっていいと思うし、逆に落ちていってもいい。そういうやりとりのなかで、会場全体が同化して、その時々にあったタイム感に巻き取られていく瞬間がたまらないんですね。また、歌や演奏には上手い下手という基準がありますけれど、やたら手が動いてもまったく感動できないギターの演奏なんかがあるように、なんとも説明のできない魅力、数値化できないところを楽しんでいるんだと思います(逆にコンピューターで編集するってことは、徹底的に数値かするってことです)。そういう人間らしい演奏を収録して(普通に収録すればそうなるわけなんですが)、届けられたらなと考えたわけです。まあ、面白くないよアンタの音楽は、と言われる可能性もあるわけですけれど。笑。
ライブ盤には、ニール・ヤングとウィルコのカヴァーも収録しています。曲が足りないのもあったんですけれども、カヴァーってもっとあってもいいのかなって思ったんですね。いろいろな歌や楽曲って、歌い継いだり、楽譜をもとに演奏し続けたりして、現代に残っています。そういうことも、やっぱり意識して行かないといけないと最近は思うんです。ポピュラーミュージックだけれども、スタンダードになっている楽曲が世の中にはいくつかあって、それには引き継ぐべき魅力がやっぱりある。そういうエネルギーや、音楽史としての流れそのものに接続したい、そういう欲求が俺にはありました。『Can't Be Forever Young』自体が、そういう流れを意識したアルバムでもあったので、何曲かのカヴァーは美しいかなと思いました。
で、レコードですね。
どうしてレコードか。それは、作るのに技術がいるからです。誰にでもできる仕事じゃない、この人にやってほしい!っていう技術を集めてできあがるものだからです。世の中、いろいろな仕事から人間の顔が奪われて、便利と引き換えに、別にお前じゃなくてもいいよって雇い主に言われているような仕事が増えてますよね。効率化とマニュアル至上主義みたいな仕事が。でも、レコードを誰でもいい仕事の積み重ねで作ったら、ただの塩化ビニールのゴミになっちゃうんです。俺の音楽を嫌いな人からすれば、どうしたってゴミかもしれないけれど、俺にとっては宝物なので、ちゃんと愛を込めて、関わる人とその技術を選びたかったんですね。安く早くっていうモノじゃない。
作ることのできる枚数も限界があります。今度のライブ盤だったら、初回プレスは2500枚。追加でプレスをしない限り、どうやっても2500人の手にしか渡らないんです。余計に500枚だけ追加で作ろうってことがとても難しいんですね。だからこそ、手に取ってくれるところを想像しやすくて、買いましたーなんていう報告が嬉しいんです。LPとか7インチに積極的にサインしているのって、ファンサービスじゃなくて、本当にありがとう!って思ってやってるんですよ、実は。だって、嵩張るわ針落とさないとだわひっくり返さないとだわ、こんな面倒な方法で自分の音楽を聴いてくれる人たちって、最高だと思いますから。
長くなってしまいました。まあ、とにかく、最大限の愛情を込めて作りました。演奏も、特に後半はメンバーもトランス状態で、それが伝わってきて自分でも感動します。臨場感もありますね。フロアで聴いているというよりは、Gotch Bandのメンバーになったような気持ちになるミックスだと思います。ステージの上で、俺のすぐ隣で演奏に混ざっているような風景を想像して聴くと、面白いと思います。
そんなこんなで、皆さんが手に取ってくれたら嬉しいです。で、映像がないですから、あとはちょっとした想像力を貸して下さい。それでこのライブ盤は完成なので。笑。各自の再生環境で、それぞれがイメージを膨らませてキャッチしたそのときが、この作品の着地場所というか、そこまで込みの作品です。完成させるのはアナタ!的な、なにそれズルい!みたいな。笑。でも、ありとあらゆる表現物って本来はそういうものです。受け取る側が完成させます。はい。
聴いた人の感想をチラホラみかけて、とっても嬉しいです。いやぁ、届けー!!って感じで、祈っています。11月19日。