TOBIU CAMPとアイヌと韓国
カテゴリ:日記

 

「アイヌ民族なんていない」なんていう阿呆な市議会議員に、心の中で中指を立てながら北海道へ。アイヌの聖地のひとつと言われている白老町で行われるTOBIU CAMPに参加。

 

 

 舞踏や音楽、造形などのアート、食事、どれも興味深かったけれども、今年はアイヌの伝統楽器の奏者であるOKIさんとのトークセッションが一番印象的だった。美術の勉強をしていたOKIさんが、自分のルーツがアイヌであることを知ったときの想いや、それが面倒になってアメリカへ逃げたという話、アメリカ時代の逸話、帰国してトンコリに出会う際の笑えるエピソードなど、短かかったけれどとても濃い内容だった。民族的なアイデンティティが揺さぶられた当時のOKIさんの気持ちを想像することは、俺にはとても難しい。日本の古い街並や仏像などの美術を見て回っていたというOKIさんは、感じ方がガラっと変わってしまったのだと言う。

 

 そういう意味では、両親の国籍が違う人なんかもそうかもしれない。中学からの友人にもいる。どんな気持ちなんだろう?って考えたことがなかったわけではないけれど、俺にはよく分からなくて、分からないからもどかしいというか、なんとも言えない気持ちを心の中で転がしておくしかなかった。近寄ることも遠ざかることもできなかったなぁ。

 

 今はなんというか、そういうこともひっくるめて、なんでもないさ、って伝えたい気分でもある。まあ、俺にとっては、君がどこからやってきたのかってことが、あまり重要じゃないっていうか、要素のひとつであるだけで、全体的には大した問題じゃないんだよってことなんだけれども、そう言葉で伝えるのは難しいね。軽々しくもなってしまう。友達っつうのは、友達であることをいちいち語らなくたってそのままで友達だから。俺だって、自分がどこからやってきたのか、よくわからない。

 

 でも、どこかの誰かが、そういった民族的な、国籍といったアイデンティティに固執して他の誰かを差別するのは許せないな。友達だったら尚更だ。社会がそういう行為を担保するだなんて、もっての他だよね。

 

 俺は特に2回目のTOBIUの時には、MCで言葉が上手に紡げなかったな。昔の「日本人」がアイヌの人たちにしてきたことを様々な本で読んで、メンタルに一撃を喰らって、どういう顔してアイヌの聖地で歌をうたったらいいのか分からなくなってしまったんだよね。今年は、それから2年ぶりということもあって、もう少しフラットな気持ちでのぞめた。その心境の変化ってのも、上手く説明できないんだけれども。

 

 そう言えば、韓国にはじめて行ったときにも緊張した。大きなフェスのメインステージだったから、石とかペットボトルが飛んでくるかもしれないだなんて少し考えてた。でも、5000人くらいの観客が一斉にリライトを歌い出したんだよね。サークルモッシュみたいなものも起こって、すごく歓迎されて、嬉しかった。音楽ってすごいなぁと思った。韓国まで連れて来てくれて、こんな光景まで見せてくれた。ありがとう、って想いだけだった。

 

 言葉にするのは難しいけれども、そういう光景と、そこで感じたフィーリングが俺にとってはすべてかもしれない。ああ、これなんだなぁ、って感じたんだけれども、これをみんなに言葉で伝えると「あそこで感じたアレ」みたいになってしまうから、笑、それはまあ、いろいろな場所で身を持って鳴らし続けるよ。ちなみに韓国での体験が元で作った曲が「転がる岩、君に朝が降る」。僕は残酷さも希望も喪失も、全部抱えて世界を転がっていくよ、って曲。そういうフィーリングは、いろいろな曲に込めているから。

 

 なんかナイーブな日記だなぁ。でも、TOBIUに参加すると、こうやって俺はいろいろなことを考えるんだ。

 

 

 とかなんとか言いながら、北海道の美味しいお酒を飲んで就寝。いやぁ、大きいなぁ、大地っていうのは。海もそうだけれども。パワーが凄い。人間はちっぽけなことばっかりして、しょーもないことばっかりやらかして、どこへ行くんだろう。でも、こうして人間が作ったもんも死ぬほど美味いんだよなぁ。どうにかして、上手にやって行く方法はないかしら。

 

 9月13日。

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