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岩手県は宮古で行われているパワーストックというロックフェスティバルに参加。震災直後から被災地を支援してきたパンクスたち。その彼らが行ってきたイベントに参加できてとても嬉しかった。KOさんにも久々に会うことができた。
まずは腹ごしらえとラコスバーガーを食べた。うむ、美味い。あまり獣肉をすすんで食べないようになって久しいけれども、ラコスバーガーにはいろいろ思い出があって、現場などで売っていると買ったりもらったりしてよく食べる。震災後の大船渡や陸前高田に俺を連れて行ってくれたのはラコスバーガーだった。そんなことを思い出しながら、一口食べたところで、後方からガシリと、何者かが俺のハンバーガーを奪い取るではないか。誰?と俺は思った。トシロウさんかな?と思った。だけれども、なんか衝撃の感じが人間のそれではない。指先にはっきりと細長い何かで軽く引っ掻かれたような痛みがあった。そんなことを一瞬で考えて、ふと足元をみると無惨に転がるバンズとパテ。
トンビに襲われたのであった。パンクスたちがひしめく出演者たちの中で、最弱であろう俺を選んで襲うその強かさ、宮古のトンビはそうとうに恐ろしいとみた。鎌倉など湘南のトンビは誰彼構わず襲っているところが邪悪であるが、ここのトンビは頭脳派だった。あるいは俺が間抜けであった。
落ち込んでいると、ステージの時間になった。
演者の中では唯一の弾語りだったけれど、心を込めて歌った。まあ、やることはバンドだって弾語りだって同じだからね。ギターを弾き、歌うことだから。天気も良くて、とても楽しかった。
終演後はいろいろな人と談笑。イースタンユースやSLANG、ブラフマンを間近の距離で観ることができてとても嬉しかった。音に覚悟が宿っているひとたちの演奏は観ていると心が凛としてくる。直前までトンビに襲われて虫けらのような心持ちであったとしても、だ。そういうところが、音楽の魅力だよね。心持ちだけを別世界に運んでくれたり、別人のように逞しくしてくれたりする。そういう音楽が好きだ。
打ち上げには出ずに、東京戻り。取材があるのと、ツアーが続いていることを考慮して。
ロックフェスは盆踊りみたいに機能していく。小さな町のフェスとか、土着の柵に縛られない新しいコミュニティの、新しいお祭り、盆踊りみたいなものなんだなと感じることが多い。こういうのは、新しい伝統にしていけばいいと俺は思う。人が集う場所はエネルギーに満ちていて、どこかに非日常性がある。そういう場は長らく日本のあちらこちらで催されてきたことだし、古くから続いている祭りも全国各地にあって、それは人々の魂を柵から開放する場でもあった。それとあまり変わらないような、ハレの集いにしていくこと、地面に根を張るように浸透していくこと、そんなことを想像すると、なんだか心臓の鼓動が早くなって行く。土着の音楽が変わっていく可能性も、そこにはある。ポップミュージックが本格的に塗り変わるような気がする。祭りを通して、ね。
宮古の皆さん、近隣の皆さん、どうもありがとう。6月1日。