転売について
カテゴリ:日記

 

 限定盤の転売についていろいろ聞かれた。限定版である以上、希少価値が生まれてしまうことに、アーティスト側が抗うことは難しい。限定盤にしないことくらいしかない。なるべくたくさん作ってしまうしかない。90年代に山ほど作られて大ヒットしたCDなんて中古屋で100円だ。でも、1万人が欲しいと思っているところに500枚しかリリースしなかったら、その1万人の欲しさの度合いにもよるけれど、プレミアがついてしまうのは仕方ないと思う。

 

 ひるがえって、絵画や美術品なんていうのは究極の限定品で、一点モノばかりだ。それはもう、ピンからキリまでの価格がついて、中には投機の対象にされてしまうものもある。

 

 音楽はどうだろう。一点モノのアルバムとか俺は嫌だけれど、例えばマスターテープとかは一点モノだろう。そういうモノを除いて、どういうわけか音楽はほとんど一定の価格で世に放たれている。これはリスナーの俺にとっては幸せなことで、ミュージシャンの俺としては「アイツの俺のアルバムの値段が同じなのはなぜだろう?」みたいな疑問も同時にある。

 

 そして、俺は俺の音楽に値段なんて、本当はつけられない。このスタジオで録音し、エンジニアやミュージシャンを雇い、海外でミックスとマスタリングをし、デザイナーにイメージを伝えてジャケットを作り、紙を選び、カッティング技師にレコードをカッティングしてもらい、工場でレコードとして製品化される。ビデオも作り、webサイトも運営する。そうしたコストから逆算して、このくらいだったら◯◯枚の売上げで採算がとれるんじゃないだろうか、というような筋道によってしか値段などつけられようものか。ポンと、1曲◯◯円!などと曲を作ったそばから即答できない。

 

 限定盤問題について考えるとき、その問題を解決するにはどうしたらいいのか、それは限定盤にしないことだ。それしかないと思う。でも、世の中のいろいろなものに限定性はあるけれどね。俺らが所有欲を捨て去らない限りは解消されないはず。4月23日。

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