2003年 | 2004年 | 2005年 |
2006年 | 2007年 | 2008年 |
2009年 | 2010年 | 2011年 |
2012年 | 2013年 | 2014年 |
2015年 | 2016年 | 2017年 |
ART-SCHOOLの新曲『革命家は夢を観る』のビデオが公開されました。俺はプロデュースとギター、コーラス、ブルースハープで参加しました。なんと、ビデオにも出演。笑。図々しい。
豊田利晃監督。いやいや、格好良いビデオですね。あと、環ROYは優れたパフォーマーだなと、このビデオを観て再確認しました。良い。
ART-SCHOOLをプロデュースすることになったのは、突然の理樹君からのメールでした。驚いたなぁ。思いつきて言ってるかもなぁとか、後でスタッフが慌てるパターンかもなぁコレ、とか、そんなことを考えながらそのメールを開いて、大好きなバンドだから断る理由がないので即座に快諾の旨を返信しました。まあ、その直前には、理樹君はひどくメンタルがこんがらがってる様子で、ちょっとのっぴきならないやり取りが公の場であったりして、笑、スタッフは肝を冷やしたと思うんだけれども、こういうところに着地するのかと、俺は嬉しかったです。あはは。
で、俺はまだ歌詞もないデモ音源を聴かせてもらって、その中から『革命家は夢を観る』の原曲を選んでプロデュースさせてもらうことにしました。他にも良い曲がたくさんあって、スケジュールが許すならば全曲ガッツリ参加したかったんだけれども、一曲と言われるならばこの曲かなと直感したんだよね。ビビビ!と、松田聖子よろしく電流が走ったわけです。
プロデュースって一般には、曲から何から、全部ソイツが裏で糸を引いていると思われがちだけれども(秋元康さんとか、小室哲哉さんとか、つんく♂さんとかのイメージかな)、それとは違いますからね。誤解ないように。笑。
で、プロデュースって何をしているんですか?という質問がよく来るので答えると、現場によって違うので一言では言えません、という身も蓋もない回答になってしまうのだけれども、敢えて言うならば、俺がしているのは「交通整理」です。どうやったらこの曲がそれに相応しい音像に着地するのか、その道のりについて、そして着地点について考えながら、バンドがそこになるべくスムースに向かうような空気と環境を用意するってことかな。あいまいかな、言い回しが。
では、具体的に。
ART-SCHOOLでは、はっきり言えばやることがあまりありません。なぜか。中尾さん、藤田さんというリズム隊がですね、俺よりもキャリアのあるプロデューサーだからです。笑。ほとんど出来上がっている。いい音像に仕上がるのかよりも「俺の仕事あるのかな?」っていう不安のほうが大きかったものね、現場に行くまでは。笑。バチっと、ブレないリズム隊がいるので、ここでの仕事はテイク選びだけです。と言っても、早々に藤田さんは「これでいい」と自分で判断されたし、中尾さんとベースラインとタイミングについて少しディスカッションしたくらいで(俺、ナンバーガールの大ファンだったから、なんとも言えない気分になりました。笑)、ここはスムースに終わりました。さすがのおふたり。
で、ここからダビング。このへんから俺の仕事って感じかな。トディと一緒にギターのプロダクションの整理や音色を考えたり、ね。自分が弾くギターのパートは考えてきてあったので、それを試して、録音したりと、役に立ったはず。終盤に向けての抜き差しとかね、そういうのをトディと話しながら組み立てて、録音する。で、たまに理樹が思いついた突飛なアイデアとかをいなしつつ、スタジオの空気を冗談などで緩めつつ、所謂オケのレコーディングは完了。
こういったサウンドデザイン、みたいな仕事を主にします、俺の場合は。でも、まあ、もうガッツリとバンド自身がやることを決めている場合には黙っています。笑。迷っているとき以外は用がない、そういう感じで良いと思っています。働けや!って感じだけれども、なるべく口を出したくないっていうのが、バンドと仕事をする場合にはあるのですよ。それでも迷いというか、不確定な部分を見つけて、口出しするんですが。ここはどうなってるの?なんて言って。図々しい。笑。
ここからは歌の録音。これ、かなり重要。
歌を良く録るっていうのは、まあ、自分が呼ばれたからには使命のひとつだと勝手に思ってのです、僕は。で、良い/悪いではなくて、好きな歌い方を集めていくようなやり方でテイクを選んでいきます。理樹君だったら、こういう息の吸い方好きなんだよね!みたいなところまで耳をそばだてて、ボーカルの録音をします。まあ、ひとりのファンになって、うわー!今の歌い方最高!とか言って選んでるだけなんだけれども。笑。これが大事だと俺は信じているのです。というわけで、途中の仕事は端折りますが、俺の大好きな木下理樹、としか言いようのない歌の録音が完了。
環ROYは2回くらいツルっとラップして完了(理樹君の歌の前に録音したわ、思い返したら)。ラップうまい。もう、バッチリ。凄いわ、これ。
で、コーラス録音。これも事前に考えてあったものと、理樹君が本番の録音で歌ったフェイクの部分などにもアイデアを加えつつ、完了。続いて、ブルースハープの録音。実際に吹く前は、かなり苦い笑いを浮かべながら理樹君は「入れなくていい」っていう空気を出していたんだけれども、笑、実際に吹いたら気に入ってくれて、採用。やった。これで俺のパートは終了。と思っていたら、「口笛を吹いて欲しい」と木下大先生からのお達しがありまして、吹きました。「口笛が鳴ってるんだよねぇ」って理樹君はずっと言ってたかな。人のバンドで、よもや口笛を吹くことになるとは!笑。
これでレコーディングは完了。プロデュースって何?という質問の答えになるかどうかは分からないけれども、俺がしたことはこのくらい。あとはミックスのときに、自分の要望を伝えました。これはマニアックすぎるので割愛します。
いろいろやり方があると思うんですよね。でも、本当は誰とどこで録音するのか、っていうところからプロデュースは始まっていると思うので、今回は共同プロデュースですよね。
Dr.DOWNERでは作曲の段階から猪股と話すし(ツッコミ入れてる感じで)、シェフの場合はシモリョーに確固たるビジョンがあるので盛り込みすぎないようにみてるだけだし、チャットモンチーには気持ちよくやりたいことを叶えてもらうだけだったし、まあ、現場によって全部違う。笑。
というわけで長くなったなぁ。まあ、いろいろなやり方があるってことだよね。でもまあ、世間の思っているプロデューサーのイメージはもう少し変わったほうが良いかなって、ちょっと思います。
3月30日。