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なんかシャリシャリした金属音を録音したい。そう思ったが、そのような楽器は生憎所持していない。はて、参った。仕方がないので小便でもするかとスタジオ外の段差に足をかけると、ポケットの中でシャリという金属音がした。あ、これだ、と俺は思った。
ポケットには何の鍵なのか本人も分からない鍵が数本混じったキーホルダーが出てきた。俺はこの鍵と鍵が打つかり合う音を録音することにした。そのまま振っても良い音がでたけれど、リズム良く振るということには全く向いていなかった。取っ手の部分が牛の皮でできているのだが、牛の皮はヌタっとしているので、上手に振るのには向いていない素材だ。ヌタっとしたリズムになってしまい、これではミリオンヒットも夢のまた夢だ。
では、スティックで叩いてみるのはどうか。これだと鍵と鍵が打つかる音ではなくて、スティックと鍵が打つかる音になってしまう。バキっというかパチっという木の打撃音が足されてしまってはイメージと違う。これではレコード屋の割といい感じの平台に展開してもらうなんて夢のまた夢だ。
俺は考えた挙げ句、ボールペンをヌタっとした牛皮の部分に差して振ってみることにした。ボールペンのプラスチック部分は振るのに適した固さで、しかも牛皮のヌタっとした部分が作用して鍵がいつまでもチャラチャラと音を出し続けるのを鎮めてくれる。見事に良い感じのチャリっとした音の録音に成功した。
俺はこの楽器に「鍵っ子」という名前をつけた。かなり簡単に作れるので、世界中に広まったら良いなと思った。10月2日。