アルバム『回転体』とプロデュースという仕事
カテゴリ:日記

 

 俺がプロデュースしたシェフクックスミーのアルバム『回転体』の全曲試聴が始まった。本当にいいアルバムなので、たくさんの人に聴いてもらいたい。アルバムを買え!とまでは言わないというか、それはどこまでいってもリスナーに与えられた権利なんだけれども(リスナーとしての俺が何を聴くかは俺が決めるのだ!イェー!みたいに俺も思うし)、やっぱり作っている側としては「一度でいいから耳を貸してほしい!」と思っているのです。そこに金銭が発生しなくとも、というかそういうこととは関係無しに、心血注いで作った音楽が誰にも聴かれないでそこらに転がっているなんて!考えただけでおかしくなってしまいそう...。なのです。

 

 試聴サイトはこちらです。PCでよろしくお願いします。

 

“適当な闇” The chef cooks me

 

 

  いや、本当にいいですよ、シェフクックスミー。昔からのファンからしてみれば、何をいまさらかもしれないけれど、明らかに音楽的なブレイクスルーが起こったアルバムです、『回転体』は。長い長いトンネルを自力で抜けきって、そこで放たれる輝きのなんて美しく優しいことか。

 

 あと、最近思うんだけど、プロデューサーって大分誤解された役割なんだなと...。秋元康とかつんく♂とか小室哲哉って感じの楽曲からアーティストのあり方までひっくるめてというやり方が、いわゆるプロデューサーのイメージになってしまっているような気がする。まあ、そういう方法は彼らの特有のものなのであって(まとめてしまったけれど御三方も、それぞれ違うやり方だし、プロデュースするアーティストによっても方法が違うはず。敬称略でごめんなさい)、それに当てはめて考えている人が結構いて笑えます(音楽ライターを標榜しているひとなんかにもいる...)。チャットモンチーと仕事したときにも、同じことを感じたな。

 

“きらきらひかれ” チャットモンチー

 

 まあ、俺がやっているのは、彼らの「アルバムの録音」についての仕事です。どうやったら、シェフが作った曲を良い環境で録音できるのかっていうことを最後まで考えて、それを整える役目というか。何から何まであれをこうしなさい、これをああしなさい、っていうことをやっているのではないんですね。主体はバンド、それはシェフでもDr. DOWNERでもチャットモンチーでも同じ。そこにエラくテンションが高くて冗談ばっかり言ってるオッサンがいて、迷ったときにだけマトモなことを言うと。笑。あとは褒めてるだけ。

 

 演奏のクオリティに関してのジャッジだけはガッツリしますけれどね。それは良く録れたかそうではないかというところなので、ガッツリ俺の管轄になるわけです。曲の良し悪しをどう判断するのかっていうのはバンドのものだと思っているので、基本的に口出ししません。ただ、「俺はこの曲が好きだな」とか「こんなの聴いてみたい」とは言うけどね、ひとりのファンのような気持ちで。笑。あ、あと、持ってる機材(ビンテージを含む)は全部貸す。

 

“レインボー” Dr.DOWNER

 

 俺色に染めるためにプロデュースしているわけではないんですよ。笑。プロデューサーってどんなことしているかって、あんまり語られないから、まあバンドでも歌手でも全体的にコントロールしているイメージを持っているひとが多いんだと思うんだけど、全然違うっていうか、そのアルバムに「だけ」参加しているってことが、もう少し分ってもらえるといいかなって思うんだけどな。この人とやると、こういう音になるとか、彼が◯◯の良さを引き出したアルバムだとか、そういうふうな、音楽を真ん中にしてプロデュースが語られるといいなって。プロデューサーを中心にして、そのバンドと音楽を語ってほしくないっていうか。逆だよって。そんなにえらくない、プロデューサーは。笑。海外ではバンドとの不仲でクビにされることもある。

 

 長々と訳の分らないことを書いてしまったけれど、俺は『回転体』の制作に参加できて、本当に光栄なのです。本気と書いてマジで、彼らの最高傑作。それが生まれる現場に立ち合えて(「立ち合う」ということばに、俺のプロデューサーとしてのアティチュードが現れておるぞよ)、とても嬉しい。

 

 8月26日。

2013-08-26 1377478500
©2010 Sony Music Entertainment(Japan) Inc. All rights Reserved.