FUJI ROCK FES. の思い出 (3)
カテゴリ:日記

 

※この日記は100%妄想で書かれています。

 

 フジロック3日目。

 

 目が覚めると、救護室だった。町内会的なテントふた張り分のスペースに100人くらいが横たわっており、皆、口々に「お母さ〜ん...」などと呻きながら丸まっている。中にはほとんどマグロ状態になるまで痛飲してゲロまみれの者もいる。そんな中で俺は、どうやら一晩を過ごしていたらしい。俺はどうしてこのような場所にいるのか良く理解できなかったが、恐らく誰かしらに迷惑をかけたであろうことは周りに累々と横たわっている酩酊者を見れば明白、「ご迷惑おかけしました」と一声発してテントを後にした。出口付近で半裸で意味不明なことを喚いている男を介護していた小柄で可愛らしいスタッフがもの凄い目で俺を睨みながら地面に唾を吐いたことから察するに、俺は相当な暴れ方をしたのかもしれない。

 

 一度宿に戻ろうかと思ったけれど、そういえばチェックインすらしていないことに気づいたので、そのままホワイトステージに向かった。七尾旅人が演奏中であった。グーっと引き込まれてしばらく動けなくなってしまった。

 

七尾旅人 “サーカスナイト”

 

 昼を過ぎてアルコールも抜けてきて、ようやく何か食べたいというような気になってきたので、森の中を通るルートでフィールドヘブンに行き、ゆったり目の麻でできた服にドレッドヘアー、髭も生やしっぱなしの青年が出店しているなんか「土着」みたいなフィーリングの雑貨とカフェみたいな店で野菜が丸ごと入ったスープカレーを注文して食べた。青年はしつこくキノコ入りを薦めてきたが、ここ2日間、キノコで酷い目にあっているので丁寧に断った。周りでは相変わらず半裸の老若男女が踊っており、メンツも一昨日来たときから変わっている様子がなく、すべての参加者がコンニャクのようになっていたので俺はカレーを食いながら走ってフィールドオブヘブンを後にした。

 

 そして、PORTUGAL. THE MANを観、DAUGHTERを観、HAIMを観た。

 

PORTUGAL. THE MAN “Atomic Man”

 

DAUGHTER “Youth”

 

HAIM “Forever”

 

 3日目にして、やっとフジロッカーらしいことができた。とても嬉しくて、レッドマーキーの脇でオイオイと泣いてしまった。しゃがみ込んで泣き崩れていると、背が高くて屈強そうな黒人セキュリティが近づいてきて、俺の頭にアフロのカツラを被せてくれた。へ?え!???と戸惑っている俺に、そのセキュリティは右手をグイとポケットから引っ張り上げるように差し出し、親指を立てて「イエァ!!」みたいな顔をしたのだった。まったく意味がわからずに怖かったが、善意のようなものは感じたので、セ、センキューと伝えた。が、「TH」をネイティブに発音しようとして舌を少し噛んでしまった。

 

 そのままレッドマーキーに居座り、最前列に移動して待っていると、MUDDY APESが始まった。ものすごいエモーショナルなライブだった。途中、バンドのボーカルがダイブをキメて、そのままクラウドサーフを始めた。オーディエンスは大興奮で彼を迎え入れたのはいいのだが、勢いあまって彼は客席中に引っ張り込まれてもみくちゃになってしまった。うわぁとか思っていると、いきなり誰かが俺の首根っこを掴んでグワシと持ち上げ、気づいたらステージの上に引っ張り上げられてしまった。ボーカルに間違われたらしい。ヤバイ、逃げないと、と思ったけれど、ステージから見る風景が思いのほか素晴らしかったので、そのままクネクネと踊りながらテキトーに観客を煽ってから、ステージ脇に高校の同級生を発見!うわぁ!こんなところで!!みたいな演技をしながらステージ裏に逃げた。そして、タイミング良くボーカルの彼がステージ復帰、ほとんどイリュージョンみたいなことになって会場はさらに盛り上がっていた。

 

MUDDY APES “Get Going”

 

 その後は段々、フジロックに、というかこの妄想日記に飽きてきたので、鼻糞をほじくったりキンタマを掻いたりしながら時間をつぶして、VAMPIRE WEEKENDを待った。その昔、グリーンステージの裏でロスタムに話しかけたことがあったなぁ、鼻毛が束になって出てたけど英語で何て伝えたらいいか分らなかったなぁなどと数年前のフジロックを思い出していると、彼らが登場した。貫禄を感じるステージだった。

 

VAMPIRE WEEKEND “Cape Cod Kwassa Kwassa”

 

 俺はもう疲れてしまった。つうかもう、なんだか意味不明の悲しみに覆われていた。3日目にして沢山のステージを観ることができ、普通の観客のように楽しんではいるのだけれども、何かこの体験自体が白昼夢のように思えてならない。なんか嘘くさい。もしかしたら夢かもしれない。そういうネガティブな思考の沼に浸かってしまって、もうどうでもいいわ、そんな言葉が脳内をループした。まずはTシャツを脱いで橋から投げた。河原でイチャついているカップルの上に落ちて「オイコラ」とか叫ばれたが、心がステンレスのようになっていたので逆上して関節などを極めたりせずに無視した。そしてズボンもパンツも脱いで全裸になった。途端に塞き止めていた感情がステンレスの扉を突き破って発露、オアシスの飲食ブースを一軒一軒破壊してまわり、全てがもうどうにもならないくらいメッタメタになっていることを確認して、屁をこいてから苗場プリンスのほうへ四つん這いで歩いていった。

 

 プリンスに着くと、俺のハーレーダビッドソンのバイクが破壊されていた。サイドカーの部分が根こそぎ奪われて、ハンドルが個性的な牛みたいな感じに絞られて変形していた。それは、ちょっと前屈みで腰を浮かせないとブレーキのところに手が届かないくらいの変形で、破壊したいという意志ではなく、屈折した悪意のようなものを感じて禍々しかったが、俺は再び塞ぎ込んで心が抗菌便座のようになっていたので、そのままバイクに股がり、全裸のまま前かがみになってハンドルを握り、菊の門を後続の車に見せつけるようなスタイルで山中へ走り出した。その後、首都高に入ったあたりでパトカーに囲まれ、現在、こうして拘置所でこの日記を書いている。来年のフジロックには行けるだろうか...。

 

 おわり。

 

※この日記は100%妄想で書かれています。

 

 

2013-07-28 1375006860
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