風立ちぬ
カテゴリ:日記

 

 早起きして、レコーディング前に宮崎駿監督『風立ちぬ』を観に行った。

 

 さすがに朝の早い時間だったので人があまりいなくて良かったが、朝のお通じの予感を覚えて厠でひと仕事終えて脇を見ると、トイレットペーパーがなかった。映画館のトイレは上映開始前の掃除が行われており、近くに清掃員の方がいたので少しだけドアをあけて、すみません、と声をかけると、その清掃員はもの凄く嫌そうな、変質者に対する侮蔑と恐怖というのが20%くらい心のなかで発露してそれを俺に向けている、ということがありありと分る表情で「はい??」っと応えた。ので、俺はドアを少し閉めて、決してここから飛び出してウンコを投げつけたり下腹部を露出したりすることが目的ではありませんよというサインを送りながら、「紙がないんですけど」と冷静な声で続けた。そして、ドアを完全に閉め、その上から手をだして「上からください」とアピールし、清掃員はやっと俺にトイレットペーパーを渡したのだった。

 

 ロビーに戻る際に「すみません」と、まあなんつうの、ピンチを救ってもらった礼のつもりで言ったのだけど、清掃員は俺を無視したのだった。え、なんか違くない?俺、悪いことしたっけな、という想いがあったが、朝も早いので飲み込んだ。

 

 しばらして、映画館の座席に座って放映開始を待っていると、暗転の直前になって4人組の家族がわらわらと入ってきた。朝早っ!と自分のことは棚に上げて思ったわけだけれど、それはなんというか、早朝から映画を家族で観に行くというシチュエーションが俺には想像できないからであった。50代くらいのお父さんお母さん、10代後半から20代前半と思しき娘2人、4人全員から結構な量を振りかけたであろう香水の匂いがした。シュッシュシュと空中に香水をスプレーで放った後にそこをくぐるなどして匂いを定着させたのかもしれない、と思うくらい迫ってくる香水の濃度だった。そいつらがメチャクチャ俺に近づいてきたので、俺は適当にチラシなどを読んで無視していたが、いよいよお父さんが話しかけてきたのだった。

 

「そこは俺たちの席だ」と言っている。意味がわからないので、俺は自分のチケットをお父さんに見せ、席が間違っていないことをアピールした。すると、そのお父さんもチケットを俺に見せ、席が間違っていないことを主張した。俺とお父さんの手元には、まったく同じことが書かれたチケットがあった。どちらにも同じ席番号が書かれていた。恐らくコンピューターの誤作動か何かが原因だろう。まあ、俺が先に来ていたし、アンタらちょっとずれたらよろしいと思っていると、お父さんは顔で「4人連番なんですよね」とアピールした。決して、「4人連番なんです」ということを言葉にして俺に伝えたわけではないのだけど、確実に、「4人連番なんですよね」という顔をしていた。同調圧力を顔で表すとこんな感じ、という表情だったようにも記憶している。うわぁ、と俺は思った。俺はド真ん中の席を取っていたので、なんつうんだろう、真ん中に俺が居座ると4人が右か左にズレないといけない。アシンメトリーみたいなかたちになってしまう。なんか悪いなぁとか思ってしまった俺は、じゃあいいっスよ、俺ズレるんで、と、席を移動した。結局、お母さんが真ん中に座って、俺が息子的なポジションで観るハメになってしまった。スクリーンから見て、左から、娘、娘、お母さん、お父さん、俺の順だった。

 

 そんなこんなで、『風立ちぬ』観てきました。感想は今回の日記では割愛します。

 

 7月23日。

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