古川日出男さんとセッション
カテゴリ:日記

 

 参議院選挙の投票日。

 

 この日は古川日出男さんの新作『南無ロックンロール二十一部経』の発売記念イベントに参加。古川さんとトークショーの後、セッションを即興で行った。

 

 古川さんとのトークは取り留めのないものだったけれど、最後の質疑応答のときに “紙やCD、レコード、の愛着について”の質問に対しての古川さんの答えが素晴らしくて感動した。俺は “紙のほうがCDやレコードに比べて愛着の度合いが高い”とする質問者に多少イラっときて、屁でもこきたい気分になったけれど、古川さんがそれに対して言った言葉はこうだ。

 

「紙などのメディア(容れ物)が滅びようとも、小説が、音楽が滅びない、死なないことのほうが重要だ」

 

 僕もそう思っていたけれど、ビシっと、それを言葉にするのは難しい。改めて、古川日出男という作家の素晴らしさを感じた。イエス!としか言いようがない。毛穴をキューと収縮させながらその言葉を聞いた。

 

 セッションはとても面白かった。古川さんは『南無〜』のテキストを朗読。俺はテノリオンとエレキギターとアコースティックギターでそれに伴奏をつけた。本番前に少しだけリハーサルをしたけれど、ほとんど打ち合わせなく即興で45分。1曲としたら長いように思うけれど、とても濃密で、あっという間の45分だった。殺伐とした「東京」のシーンからはじまったッセッションは、途中、楽屋で言っていたのと違うところ読んでる!とか、それが増えてる!とか、 “ぶっ込み” が古川さんからあって(セッションは30分の予定だったし)、そういう予期しないやりとりがとても良い緊張感を生んで、俺はそれを楽しむことができた。どっちに行ったら発展するのかを音楽的な本能で探りながら、持ってる技術の中から音を選んだ。あるいは呼ばれたかのように演奏した。最後は古川さんが「オールライト」と作品にはない言葉をボソっと言ったので、俺はそれを拾って歌った。そのまま、ふたりの輪唱が始まって、最後は「トウキョウ。チルドレン。オールライト」という言葉に着地した。

 

 いい夜だった。

 

 部屋に戻ってTVを点けて、全面的にいい夜ってわけでもないな、とも思った。

 

 7月21日。

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