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フランスはパリからドイツのケルンへ電車で移動。
俺とケンさんがiPhoneでパリ駅を撮影していると、小柄な女性三人組が署名してくれみたいなノリで近づいて来た。インドあたりのアジア系といった風貌で、よく見るとババアだと分かる母親と、母親によく似た子供ふたりという編成だった。まずはケンさんに群がっていたが、俺のほうにも向かってきた。明らかに怪しいので、俺は強めに「ノー!」と答えて追っ払った。
しばらくすると、またケンさんのところに三人組が群がっている。「ダメ、ダメ」みたいな感じで優しく追っ払おうとしている。と、ケンさんが「iPhoneがない」というようなことを言い出した。我々のマネージャーがリーダーであり主犯であるババアに「返せ」と迫る。当然、ババアはしらばっくれるわけだけれど、このとき、子供がスッとババアの手から何かを受け取るのが見えた。マネージャーも「渡した!」と興奮している。俺は子供のところにすり寄って手を掴み、アンケートの紙に挟んで隠してあったケンさんのiPhoneを取り返したのだった。
すると、三人組はあっと言う間に退散していった。ババアが子供を平手打ちするのが見えた。
ケンさんの上着にさっと手を入れて簡単に奪っていくあたり、ババアが手練であることは間違いない。だが、子供はそうではなかったように思う。手を掴みこそしたが、振り払えないことはなかったと思う。走って逃げることもできただろう。だけれども、彼女はしなかった。案外、あっさりとiPhoneを俺に渡したことから、俺はそんなことを想像する。ババアが引っ叩いたのは、躊躇するなということなのだろう。
何をどこから呪えば良いのかは知らんが、彼女の良心が息絶えないことを祈るし、そうせねば食っていけない状況が改善されて欲しいとも願う。とても青臭い書き方なのだけれど、本当に。盗られたほうの物差しからすれば彼女らは一義的に「悪」なのだけれど、それで片付けずにややこしいことを想像してみるのが、俺の性分なのだと思う。
ケンさんにはどこか、隙みたいなものがあるのだろうか。一件が落着したあとで、そんな話を皆でした。世界的にみてもカモに見えるのではなかろうかと。冗談だけど。笑。
電車ではまた4人同じ席になった。今度は別れずに、同席して移動。車窓からの景色は雄大そのものだった。どこの駅にも大概落書きがあって面白かった。そこらへんは、どこの国の若者でも変わらんのだなぁと。笑。日本代表のGK川島が所属しているリエージュの街も通過した。駅がとても美しかった。
辿り着いたケルンの街はとても平和的に見えた。駅前の大聖堂がとても美しかった。俺たちは機材車に乗り込み、ホテルに荷物を預けてからライブ会場に入った。
来月にはビーディアイも来るという会場は、800人くらいの規模の大きさだったろうか。詰めれば1000人入るかもしれない。今回のツアーの会場はどこもそれなりに大きくて驚く。
ライブはとても盛り上がった。チケットはソールドアウトとはいかなかったけれど、パリやロンドンと同じように熱狂的な歓迎を受けた。とても嬉しかった。イントロや間奏で沸き起こる歓声には、本当に興奮した。素晴らしい体験だった。
それから、ここまで散々「ケルン」と書いてきたけれど、正確には「コロン」だった。笑。誰だよ、「ケルン」って読んだというか、言い出したヤツは。ヨーロッパのどこでも、ドイツのどこでやるのかを説明するときには「コロン」と言わないと通じなかった。こういう日本語読みの問題、なんとかならんかと思う。6月3日。