『ランドマーク』全曲解説 「踵で愛を打ち鳴らせ」
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 全曲解説もあと2曲ですね。今回は「踵で愛を打ち鳴らせ」。

 

 これはケンさんのアイデアを元にセッションで組上げた曲ですね。イントロのオルガンのような音、実はギターで出しています。POGっていうエフェクターで作ってます。ちなみに、俺はこの曲のコード進行を知りません。笑。なぜかというと、1曲を通してほとんど同じポジション(イントロの高音は違うけれど)を弾いているからです。全体のアレンジがサクサクと進んで行くなか、いつもみたいに分厚くパワーコード(3度を省略したコードね。5度しか弾かない)を重ねていくのを避けたんだけど、そうこうしている間に全体的なコード進行が決まっていったので、俺はウワモノを考えることに徹していました。

 

 それでできたのが、全体的にかなり豪華なコーラスワークです。コーラスについては、アルバム全体を通して、とくにポップな曲は祝祭まではいかなくても多幸感を、ダークな曲には攻撃性とか不穏な空気を、そういった感触を付け加えるために効果的に使いたいなってずっと考えていました。「人の声」に興味が集中しているのは「ワールドワールドワールド」くらいからなんだけれど、ね。で、「マジックディスク」はもうほとんど自分でコーラスも歌ったと。それはとてもコントロールしやすかったし(なぜなら自分だから)、良いものができたんだけれど、「ランドマーク」では人数感が欲しかったというか、そうすると更に人と人が絡んで有機的な印象になるというか、そういう効果を狙って山&ケンにも積極的に歌ってもらいました。やっぱり、人数が増えると華やぐんです。人の声のエネルギーって凄いから。でも、最近ではケンさんよりも俺のほうがファルセットも出るので、えー!そこ俺??って場所も結構あったのですが。笑。

 

 ただ、例えば「バイシクルレース」のヴァース(Aメロ)とかは人数感があると、歌詞やメロディと雰囲気が乖離してしまうので、自分で重ねます。ああいう独白的な歌詞のパートで人数感が出ると、世界が広がってしまって切ないところなのに変に楽しくなってしまう。そういうことも、ちゃんと考えています。歌詞に合わせているというか。こういうことを几帳面に考えるのって、日本人だけなんじゃないかと思います。音楽に乗ったなにがしを「言葉」として受け取る能力に特化しているというか。文化的に音楽も言葉に寄ってるというか。まあ、その話は長くなるのでこの辺で。笑。

 

 歌詞はヴァースのテーマを決めるのに困って、喜怒哀楽を直喩で書いていくという荒技に出ました。サビはもう仮歌の段階で「オールウェイズ!オールウェイズ!」って歌ってしまって、あまりにハマりが良いのでそのまま採用しました。これはもう呼ばれちゃった言葉だなと。あとは「書を捨てよ、町へ出よう」というか、それに一言付け加えて、「そして、踊ろう」というか、身体なんだと、それは『THE FUTURE TIMES』を作ってることに通じているんだけれども(つまり、俺の新聞のテーマ曲は『マシンガンと形容詞』と共に『踵で愛を打ち鳴らせ』でもある)、そういうメッセージが込められています。メッセージというか、願いだね。女の子は「つま先で」、男の子は「踵で」、生きていることを実体として、鳴らそうと。

 

 ラストのコーラスワークの部分を聴きながら、ひとまずLINEやツイッターやFaceBookは置いといて、町に出て、全身でワー!!!って、生きていることを感じるというか、もう一歩進んで「素晴らしい」って、一瞬でもいいから感じて欲しい。そうだったら嬉しいな。この曲が鳴っている間だけでも。5月12日。

 

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