『ランドマーク』全曲解説 「レールロード」
カテゴリ:日記

 

 すっかりアルバム『ランドマーク』の全曲解説を忘れてました。すみません。

 

 発売から随分とたってしまったけれど、この全曲解説を読んでもう一度聴き直してもらっても良いし、あるいはレンタルしてもらったり、買ってもらったりしても嬉しい。だから、まあ、タイミングとしてはすかりズレてしまっているかもだけど、最後まで続けます。

 

 今回は「レールロード」です。

 

 歌詞を読んでもらえればわかる通り、というかタイトルからして、鉄道のことを歌っています。アルバムの中でも唯一、直接的に自分の目で見た風景のことを歌詞にしています。

 

 では、解説を。

 

 東日本大震災のあと、しばらく経って、俺はラコスバーガーのラッコさんの誘いで大船渡と陸前高田に炊出しの手伝いに行った。水沢江刺の駅を降りて、そういえばKESEN ROCK FES.のときに通った道だななんて思いながら、ラッコさんに指定された大船渡のリアスホールに向かった。手ぶらで行くのもなんだなんて、父親の実家のタバコ屋で当時不足していた煙草を少しわけてもらって、それを持って向かった。なんで煙草かってのは、今から思い出してもよく分からないんだけど、そういう嗜好品も差し入れの中に混ざってたら良いんじゃないかって思ったんだよね。俺はひねくれものかも知れない。

 

 で、ギターを持って行った。芸能人とか(俺は芸能人じゃないけれど)、音楽とかやってるヤツがちょろちょろ来やがって!なんて思れるんじゃなかろうかなんて余計なことばかり考えて、持っていくことに躊躇があったけれど、ラッコさんが「持って来たほうが良い」と言ってくれたので、ソフトケースを買って背負って行った。結果、それで、少しでも喜んでくれる人がいて、とても嬉しかったし、逆に、俺が救われて帰ってきた。忘れられないことだらけの2日間だった。

 

 それからも陸前高田や大船渡に行く機会が何度かあって、俺は何度も水沢江刺から大船渡や陸前高田に行ったし、帰りも水沢江刺に戻ることが多かった。そうすると道なりに「宮沢賢治」の文字が目に入ってくる。俺もまあ、人並に宮沢賢治が好きで、「アフターダーク」という曲は『よだかの星』という作品をモチーフにしているし、平塚(美術館だっけ?)で生原稿の展示があったときには観にも行った。俺は陸前高田や大船渡や住田町からの日が暮れた帰り道に、『シグナルとシグナレス』という作品を思い出しながら、岩手の深い森を遠くに眺めながら(というか、それはほとんど闇だけど)、いろいろなことを考えた。寝てしまったこともあるけれど。

 

 そして、途切れてしまった鉄道たちも、様々なところで見かけた。それはなんというか、物理的な衝撃の大きさを表していたけれど、それ以上に、震災によっていろいろな繋がりも寸断されたんだということ、それは土地と土地であり、人と人であり、生活と生活でもある。鉄道が途絶えている姿はそういった切断の、比喩のような風景のように感じた。そのひとつひとつを繋げていくことが復興なんだなとも思った。列車が町を走るように、町と町を繋ぐように、そうやって流れていた人の行き来のように、僕らはいろいろなものを巡らせ直して、立ち直って行くんだ。外から来た俺のいうことではないかもしれないんだけれど。でも、いろいろな流れが途絶えているのは、都会のほうが顕著だとも、思った。

 

 まあ、こんな心象と、水沢江刺までの岩手県の気仙地方までの景色と、三陸鉄道と、常磐線もかな、そして宮沢賢治と、いろいろなものが混じって、この曲になっています。哀悼と、祈りと、希望を込めました。

 

 曲の大元になるアイデアはケンさんのリフから。コード進行もある程度ケンさんが考えていたように思う。で、それを少し手直しして完成したと思う。オーセティックなギターロック。イントロからのギターリフ、俺とケンさんのリズムの解釈っていうかニュアンスが微妙にズレてて、けっこう揉めました。あと、「ストロークスのナントカって曲に酷似しています!パクリですか?」っていうツイートがよく俺に来ていたけれど、最初から最後まで、少なくとも俺はストロークスを意識した瞬間はなかったです。笑。

 

 5月7日。

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