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部屋でWBCの準決勝をまるまる観戦したかったけれど、この日はDr.DOWNERのレコーディングだったのでスタジオへ移動。心頭滅却して作業に打ち込む予定だったのだが、結果が気になってしまって、エンジニアの岩田さんと猪股と一緒にTV観戦。
部屋で観ていた感じでは調子の良さそうだった能見投手が一発食らって、試合は既に3対0になっていた。が、鳥谷の三塁打!でヒートアップ。井端のタイムリーヒットで大興奮。それに内川も続いて、スタジオ内のムードは最高潮に達していた。まだ一声も猪股の歌を録音していなかったけれど、なんか作業がうまくいってる感じ、喉の調子も良い感じ、今日はこのまま中華屋にでも繰り出して瓶ビール5、6本頼んで帰ってしまいたい感じ、そういう幸せな空気に包まれていた。ありがとう、侍ジャパン。と、スタジオの百姓たちは思っていた。
だが、その直後のダブルスチールで試合はある意味で終わってしまった。
俺たちは呆然として、今何があったのか、どうして歌の録音をはじめずに野球のこと、ひいては瓶ビールと中華料理のことについて考えていたのか、良く分からなくなって混乱、互いに罵り合ったりフェーダーのツマミを滅茶苦茶にしてアナログテープを弾きちぎって脱糞、そうしたい気持ちもあったけれどもどうにか取り直して、作業に戻ることにした。その後の作業は順調だったのだけれど、ダブルスチールのことはずっと考えてしまった。猪股は「♪ダブルスチールぅ〜」と歌詞を間違えたりしていた。余程気になっていたのだろう。
まあ、セオリーからいくと、バッターは左打者なの捕手は三塁に送球しやすい。なので、あまり左打者のときに三盗はしないのではないかと思う。バッターは4番、あの場面で勝手に走ると死ぬほど怒られることは身をもって知っている。
俺は高校のときに、2対1で負けている試合に代走を命じられた。ランナー1塁。バッターはキャプテンで4番キャッチャー、チャゲ&飛鳥のチャゲのパートをカラオケで勝手に歌うヤツで、チームの柱だった。俺は猛烈に眠かった。前日、地元の不良から深夜に呼び出されて「ブッ殺すぞ、コラ」みたいな状況になってしまったので、精神的にも参っていた。ボーっとしていた。なので、監督が何のサインを出したのかよく見えなかった。一塁のコーチに「今のサイン盗塁?」と聞いてみたらば、「分からん」と、アホ丸だしの顔で彼は答えた。俺は絶望した。
だったら走らないほうが良いなと思って1球目をやり過ごしてベンチを見たら、監督がイラっとしているように見えた。ヤバい。これ盗塁のサイン出てたんじゃない?と焦ったが2球目は何のサインも出なかった。「盗塁?」と確認しようと一塁コーチを見ると、俺のほうを見ないようにしていた。さらに絶望。監督のイラっとした表情が「なんで走らんの?」という感じに思い出されたので、俺は走ることにした。足は結構速かった。50メートルで6秒3くらいだった。自信があった。ただ、長い補欠暮らしと昨夜の一件で感覚が麻痺、俺は大幅にベースを通り越したところまでスライディングしてしまい、アウトになってしまった。監督には「状況から考えて、あそこで盗塁はないだろ。4番は長打あるやんけ。同点の芽を摘みやがって。ボケ。カス。帰って寝ろ」というような内容のことを伝えられて、ますます出場機会が減ったのだった。そういうことを思い出した。一塁コーチは俺と一二を争うクオリティの補欠のヤツだった。嵌められたのかもしらん。
負けてしまって残念だったけれど、台湾戦の感動は大きかったし、俺はWBCを楽しんだ。いろいろな人がひと言意見を言いたくなってしまうってのも、良いじゃないかと思う。スポーツ観戦って、そういうのがあったほうが面白いし、盛り上がる。選手の皆さんには、ありがとうと言いたい。特に井端。最高に格好良かった。
ことあと、年間で140試合くらいやるってのが凄いなぁ、それに比べたら歌の録音くらい、ね、と自分たちを奮い立たせて録音再開。順調。3月18日。