ずっとプロデュースしているDr.DOWNERのレコーディングが再開。この日はボーカルの録音。

　そう言えば、震災の直後の時期にも、余震と放射能にビビりながら彼らのレコーディングを手伝っていたんだった。音源の制作は震災前から決まっていて、Dr.DOWNERにとっては、というかバンドにとってアルバム制作は人生を賭けるような大きなことで、それなのにもっと大きな出来事が起こって、つくづく運の悪いヤツらだなと思った。悔しいなと思った。横須賀や三浦半島で、クソみたいな日常に浸りながら、音楽だけが希望で、そうやってロックにすがりついているようなヤツらの、機会がこんなふうに損なわれるなんてあんまりだと思った。10代の頃から知っているし、ここまでの悪戦苦闘の日々も知っているから、尚更。でも、だからこそ、こんな困難をぶっ飛ばせよパンクキッズ!と思いながら参加した。そうやって出来たのが『ライジング』というアルバム。

　ボーカルでソングライターの猪股がアルバムの最後に用意した『明日、晴れればいい』は、震災を想起をさせる言葉はひとつも出てこないけれど、シャイなアイツなりの震災へのリアクションだと俺は思っていて、とても温かい歌で、救われたのを覚えている。

　アルバムは大して売れもせず、アイツらは今日も三浦半島でクソのような日常を煮詰めている。笑。そして、また俺と一緒にアルバムを作っている。今度こそ、と思う。

　まったく、涙が出るよ。3月12日。