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DAW(デジタルオーディオワークステーション)とPCを使って音楽を制作することが普通になったのは随分前で、俺も例に漏れずCUBASEというソフトを使ってデモの録音を行っている。最近では完成された音源にも、自前の作業場で録音した音をそのまま使うようになった。『新世紀のラブソング』の逆回転のノイズとか、まあ、ソロ曲の『LOST』で言えば、ほとんどの音を自分で録音している。
で、PCで作業するようになって、もっと言うと、鳴らしたものをハードディスクに録音していくというよりはPC内で完結する作業なんかも増えてきている。ソフトシンセサイザーも良いヤツが一杯あるし、ドラム音源なんかも同様に良いソフトが一杯ある。ただ、そういうソフトの中で迷子になってしまうことがある。音色がとにかくやたら入っているので、その中から「ええ感じの音」を探し当てるのに時間がかかってしまう。実機のツマミを回してではなくて、例えば、「木琴」「ラッパ隊」「古いピアノ」「なんか凄いオッサン、スティーブ・マッコイ(仮名)の監修したギュインギュインいうヤツ」みたいな「設定」が山ほどあるなかから、自分のイメージした音色を探す。その総数がヤバイので、「この3万枚の中から自分の答案用紙を見つけて」みたいな感じになって、探す前から途方に暮れる。
そうすると、大体、使うソフトは限られてきて、やっぱこれだよねー、慣れてるしねー、ってことで、一緒に買った結構高級なプラグインとかも使わずに放置するようになってくる。もったいない。
これが実機だとそうはならなくて、スティーブ・マッコイ(仮名)は何も手伝ってくれないので、自分でツマミを回して、この楽器はどこをどう触るとどういう音が出るというのを理解していく。PC内だと、スイッチやツマミそのものがバーチャルだし小さいので、どうしても網羅しようという気にならない。触っている感覚がないからだと思う。あくまで、仮装として実機のイメージを利用したり復元しているのだけど、まあ、それとは別物な意味合いも持ってしまっている。マッコイ(仮名)の作った「MIYABI」とか「SAMURAI」とか、その音色を切り換えたときにどのツマミがどれくらい動いたかが、はっきり言えば分からないし、分かろうとすると超メンドクセー、早く録音始めてぇ、ということになってしまう。
なので、まあ最近は、やっぱり物としてあったほうが良いよね、という気持ちになっている。要らなくなったら、売れるしね。資産なんだなと、実際にある物は。
というわけで、マイクのプリアンプとかを買って、実際に鳴った音をどうやって録音するのか、ということに興味は戻っていく。PC内で完結される音の中にも素晴らしいものはあるのだけれど、俺はアナクロな人間で、こうしてツマミを回したりボタンをポチっと押したりしながら、そうやって作るのが好きみたい。でも、ちゃんとデジタルの良いところも使いたい。要は自分の直感が最も反映できるスタイルで音楽を作りたいってことだね。ライブラリで迷子になるのは、なんていうか、インスピレーションとその発揮の順序に、余計な労力と時間が挿入されるような気分になる。
まあ、もう少し分かりやすく言うと、同じ部署の同僚に「明日の打ち合わせの時間を変更したい」って伝えたいのに、PCメールのフォント選びに2時間かかるとか、そういうのもう良いかなぁって(そんなシチュエーションなんてないから、バカバカしさが分かるでしょう?)。そこは手書きのポストイットでも良いよねっていうか。それより打ち合わせの「内容」のことに時間を使いたいっていう気分もあるので。
音でも機材でも、そこに在るもの(在ったもの)の強さとか魅力とか、それを実感しながら、いろいろ作ってる。2月26日。