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全曲解説。今回は「1.2.3.4.5.6. Baby」です。
ただの数え歌やないか、というツッコミがあると思うんですけれど、それはその通りで、数え歌を作ろうと思って書いた曲です。
実は地味に(ニュースになってないので)海外公演の引合いとか、実際に海外に行ったりだとか、数年前からあるんですね、アジカンって。豚インフルエンザとかSARSとか、または急遽「会場にドラムありません」とか、そういう理由で実現しなかった公演とかもあります。で、そういう機会もあるので英語で歌ってみようかしらん、とは俺はあまり思わないタイプで、多分、自分の考えていること感じていること、というか詩のクオリティとして、言語的な能力と直結しているのは日本語での技術なんですね、否応なく。だから、ここ一番の場面で「左手で投げてみようかしらん」とどこかの投手が思ったりしないのと同じように、俺は英語とかスペイン語で書いてみようとは思わないんです。これ、音ではなくて、あくまで詩として考える場合ですけど。
だけども、そういう中で、やっぱりポップミュージックなので、共有されたときの魔法ってのを味わってしまっているので、なんとかどこへ行っても共有しやすい方法って何かな?とか考えたわけです。それで、あ、数え歌だな、と思ったんです。1234と数字を数えるところは現地の言葉に替えてもいけるな、という構想を練っていたんです。実際に書いてみたのがコレ。そういうパフォーマーとしての、スケベな歌です。笑
「All right part2」の言葉遊びとか、「AとZ」の言葉遊びもそうですが、基本的に日本語でしか理解できないやり方なんですね。アジカンのアルバムは、『ワールドワールドワールド』から全曲英訳の歌詞を添付していますけれど(海外の人に向けて)、それを読んでも「あいうえお」順に書いていることの遊び心は伝わらないですから。もちろん、単にシュールにならないようには書いてますけど。
実はこの曲も「斜(7)めになって」「蜂(8)になって」「苦(9)しくなるなら」「遠(10)のいて」「一時(1)の曇り」......と日本語パートも数え歌を続行しています、地味に。これはどんな言葉に訳しても、日本語でないと理解できないですよね。例えば、村上春樹さんの小説が世界で評価されるのは、内容として、こういう英語にした場合に理解されないところがないというか、越境的というか、そもそも国境や言語の壁が内容として敷かれていなんだと俺は思うんですが、改めて、自分は日本人で、しかも内向きな表現をしているんだなと思うんです。こういうアルバム全体の言葉遊びを考えると。
曲は建さんの考えてきたリフレインを活かすように作曲していきました。というか、コードが最初から最後までふたつしか出てこないので、本当に簡単です。Aadd9とEだけ。笑。それ以外、解説するところ、ナシ。あはは。
音楽を始めた頃は、何語だって良かったんですよ、歌詞なんて。歌詞が完成していなくても、適当にB-DASHというバンドがやっていたようなハナモゲラの言葉でライブをしたこともありますし、実際。音としてしか、考えていなかったんですね。だから、洋楽への憧れもあったんですが、初期は英語の曲を作っていました。別に、歌っている内容を誰かに知って欲しいとも理解して欲しいとも思っていなかったです。良いメロディで良い曲だと言われたかった、だけだったんです。
変わるものだなぁ、って、自分でも感心します。
解説から話がそれるけれど、B-DASHとか、それをもう少し入り組んだ形で引き継いだマキシマム ザ ホルモンのやり方とか、発明だと思うんです(なにしろ、売物として成り立った)。俺はそのあたり、亮君にも直接話しましたけれど。聞いている分にはほとんどサウンドとしてしか入ってこない。でも、詩を読むとちゃんと意味がある。意味がなくても日本語として書かれているし、「意味なんてないです」と本人が解説していもする。これ、ほとんど日本人が英語で歌う場合の意義とか意図を、まあ、8割くらい持ってっちゃったなと、これをやられてしまったら、日本人が英語で歌う場合のハードルが上がるわぁっていうか、別のことやらないといけないんだな、って思うわけです、俺は。日本語でもできるよ、って人たちが出てきてしまった。なんとなく英語、格好良いから英語、みたいな選択のなにがしかは、B-DASHとホルモンによって暴かれてしまったんですね。面白いですよね。
なんつって、長くなりましたけど。日本語の詩にメロディをつけて歌うことは、意味がどうしても付いてきてしまうというか、ときに付いてくるどころか音楽を追い抜いていくこともあるので(これは脳の機能としても)、難しいです。1月14日。