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我々の最新アルバム『ランドマーク』の解説。今日は「N2」についてです。メンバー内では「エヌツー」と呼んでいます。
どこから話すのがいいのやらって感じもします。というのも、この手の曲は歌詞にせよ何にせよ、あまりこういった場で語らないほうが、その魔法っつったらアレですけど、そういう類のパワーが落ちる気もします。だけど、それを言うなら最初っから解説なんて始めなければ良いっていうだけの話ですよね。なので意を決して書きます。うむ。
流れとしては、うーん、どこから書こうかな。震災というよりは原発事故以降、斉藤和義さんのパフォーマンスの影響もあって、「お前ら若いロックミュージシャン、ヌルいことやってんじゃねえ!このボンクラ!」みたいな反響があったんですね、少しですけれども。「どうして清志郎みたいにやらないんだ!」という論調だったと思います。主に、年上の方が絡んで来ましたけど。笑。それだったら、俺が震災前に「原発ってどうなの?結構、問題山積みですよ」って日記に書いてた頃に反応っていうか応援してよっていう愚痴のひとつもこぼしたいですが、それはしないとして、でもですよ、なんとなく「原発反対!」って直接的に歌うことへの抵抗があったんです。今だって、そういう、たった一言で片付けちゃうような歌詞は書けません。随分と政治的だと言われるようになりましたが、それでも自分の中でアリとナシのラインっていうのがあるんですね、俺の中でも。
そういう風潮に対して、俺なりにちょっとリアクションしたというか、そういうものでもあるかもしれません。そういうのやりたくなかったけれど、「ヌルくねえよ!ジジイ!」みたいな気概というか反骨精神もありますから。届いてないと思いますけど、あの時怒ってたオジサン達に。笑。で、こういうの作って凄いでしょ?、政治的でロックでしょ?みたいな気持ち、ないです。溜め息を付くような逡巡が今でもあるし、歌う場所によっては緊張もします。音楽と政治的な言葉との距離、迷いがあります。表現するということに迷いはないけれど、どんな題材とどんな言葉を選ぶかっていうのは、本当に揺れてます。
だから、メッセージの伝え方としてどうなのかっていうのは、実は自分でも対象化できていません。言ってることわからないでしょう?聴いて直ぐには。俺も、意識的にそう書いています。それは俺の中に、できたらこんなこと歌いたくないっていう気持ちも少なからずあるし、でも歌わなければって気持ちもあるし、ただ言葉だけが飛び出してしまうような書き方は嫌だし、そのバランスを当時のやり方で取ると、この曲のようなサウンドでああいう言葉の選び方になるのかなっていうか、そうなったのです。全力でこれかな。メッセージと効果という意味だと、もしかしたら、中途半端かもしれない。でも、「何のことを言ってるんだろう?」って言葉選びのほうが、俺は良いと思うんですよ。端から端まで、メッセージを読み間違えないくらいの歌も凄いですけど、そういうことではなくて、考えて欲しいというか、曲の中に入ってきて欲しいという気持ちはどの曲にもありますから。一歩だけ歩み寄ってもらうと景色が開けるような構造というか。まあ、ほとんど皮肉を投げているような歌詞ですけど。うーむ。
なので、細かい詩の解釈は、ここでは語りません。考えてみて下さい。別に、単純な「原発反対」という歌ではない、ということはここに書いておきます。
『How to Dismantle an Atomic Bomb』というU2(アイルランドの超ビッグバンド)のアルバムがあります。直訳すると、「原子爆弾の解体方法」ですね。そのアルバムのリード曲が「Vertigo」。そのメインリフの雰囲気だけ(実際には違うフレーズなので)引用してます。皆が指摘するの大好きな「パクリ」じゃないからね。笑。それで「No Nukes」と「U2」と、この曲はもともと、俺が「2秒あったら曲できるよ」って言って何のネタもなしにメンバーの前で演奏してみせた曲なので、そういう色々が混じり合って「N2」と名付けました。最初のデモのうちは「2秒」と呼ばれていました。
建さんのギターが最高ですね。ほとんど一筆書きのように弾いて、それをOKテイクにしたと記憶しています。俺はもうスタジオで大興奮して、「格好良い!!初めてギタリストとして格好良いと思ったわ!!!」とトークバックで話しかけて、「逆にそれは褒めてないよ」とディレクターに口の利き方について指摘された思い出の曲でもあります。笑。しかし、この曲の建さんのギターは、何度聴いても惚れ惚れとする。素晴らしい。最高。うむ。
そんなところでしょうか。1月10日。