お詫び
カテゴリ:日記

 

「徴兵制はデマなんだよ!ド阿呆!」というツイートを沢山ではないけれど、少なからずいただきました。確かに、「徴兵制」という言葉の選択にはこちらの感情的な部分も乗っているので、反省します。ただ、アホだとかカスだとか言われても、依然として直感的に「怖いな」と思える匂いを感じます。

 

 なぜか。まずは自民党の改憲案では、自衛隊が国防軍に改称されて、軍隊として位置づけられます(ちなみに、朝鮮戦争時にアメリカの再軍備要請によって発足したのが警察予備隊で、それが現在の自衛隊だと認識しています。そして、「自衛隊」は強かな発明品のようなものだと僕は考えています)。現在の9条は書き換えられて、「国権の発動としての戦争」は放棄されていますが、自衛権の発動、つまり交戦権が明記されます。第九条の三、には、「国民と協力して」という文言があります。これについては後ほど、書きます。で、集団的自衛権の行使も議論するということを各候補が言っていましたよね。これが認められると、同盟国のアメリカが始めた戦争が仮に起こったとした場合、非戦闘地域での補給活動などという例外を作らなくても、大概の場所には行けることになりますよね。テロとの闘い、という理由で武装地域に行かなければならないこともあるかもしれません。国防軍として、制裁活動(攻撃ですよね?)にも参加できると憲法改正案の資料には明記されています。もちろん、派遣するかしないかは時の政府の判断です。アメリカの圧に屈しなければ、という前置きがいるかもしれませんが。

 

「ちょ、徴兵制のちょの字もねぇ!やっぱりお前はカスだな」という声が聞こえます。ですが、すみません。続けます。

 

 次。自民党マニュフェスト。教育の項目で、「大学の9月入学を促進し、高校卒業から入学までのギャップターム(半年間)などを活用した大学生の体験活動を必修化」と書いてあります。この「体験活動」には様々な福祉や農業やNGOなども含まれますが、同時に自衛隊での活動も含まれています。というか、改正するならば国防軍ですよね。選択制ならば兵役=徴兵制ではない、という主張も分かります。でも、何かしらの活動を必修化するということは、書いてあります。大学生限定ですが。これはそんなに気にしないでも良さそうですね。

 

 で、自民党の憲法改正案のQ&Aに移ります。前述した九条の三の解説のところですね、そこにはこうあります。

 

「党内議論の中では、「国民の『国を守る義務』について規定するべきではないか。」という意見が多く出されました。しかし、仮にそうした規定を置いたときに「国を守る義務」の具体的な内容として、徴兵制について問われることになるので、憲法上規定を置くことは困難であると考えました」

 

 党内では、国民には国を守る義務があるという意見が多いということです。国が国民を守るのか、国民が国を守るのか、というのは難しい問いかもしれません。特に人権が絡むと、難しいですよね。国民の前に人間であると、そう考えると、人間と国家の関係はとても難しい。僕はそう思います。この文言では、「徴兵制」という言葉が出ましたが、これは否定しているのだと取れますが、なんとも言えない違和感が、僕にはあります。気のせいですかね。そして続く文言はこうです。

 

「そこで、前文において「国を自ら守る」と抽象的に規定するとともに、9条の3として、国が「国民と協力して」領土を守ることを規定したところです」

 

 僕はさらに違和感が増しましたけれど、読み違えでしょうか。抽象的ですが、規定しましたと、そう読めます。僕の国語力が低いようでしたらお詫びします。そして、本文にはそれに続く文言もありますので、詳しくは自民党の憲法改正案のPDFをお読みください。自民党のホームページからダウンロードできます。

 

 それで、人権だと書きました。ややこしいのは。続くQ13にはこうあります。

 

「原稿憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました」

 

 すべての人間は生まれながらにして自由・平等の生活を享受する権利を持つという思想ですね、天賦人権論というのは。アメリカ独立宣言やフランス人権宣言にも明文化されているそうです。それを改めるということはどういうことなのか、僕にはあまり良く理解できません。人権は国が規定するということでしょうか。だったら恐ろしいですね。どういう意味なのでしょう。ただ、「基本的人権は侵すことのできない永久の権利」だとQ&Aでは回答されています。憲法案では、「この憲法が規定する基本的人権は」と前置きされていますので、憲法がどう規定しているのかが問題ですよね。天賦でないと規定されているのならば、人権は天賦のものではない、その上で犯されないのだと頭の悪い僕は読みました。

 

 その後の、十二条、十三条では「公共の福祉」の「福祉」が分かりにくいといいことで、「公益と公の秩序」に書き換えられました。ここは過剰反応だという意見もあるかもしれません。ただ「公共の福祉」の場合は人権vs人権になってしまうという問題を抱えている指摘があるそうです。「公共の福祉」は社会構成員共通の利益だと広辞苑に書いてあります。人権を掲げて何でもやっていいというわけではないということですね。そんなの当たり前だと思うんです。知る権利がある!っていって他人の家に勝手にあがってはいけないように。それを書き換えるわけです。「秩序」は「物事の条理、物事の正しい順序・筋道」という意味ですね。これもよく分からないのですが、どうでしょうか。ただ、秩序を規定するのは権力の側じゃないかと思うんです。秩序罰だなんて言葉があるくらいですから。

 

 長い。こんな長文、誰が読むんだ(笑)。しかもミュージシャンの日記。ヤバい。でもせっかくなんで続けます。

 

 で、憲法改正について、両議員の三分の二以上の賛成による国会議決を過半数にして、国民投票や選挙の際に行われる投票の過半数を有効得票の過半数と変えるのだと書いてあります。現行憲法の改正のしづらさと、憲法改正の是非はもちろん議論されるべきだというのは前置いて、かなり改正へのハードルが下がりますよね。政権与党が圧倒的な支持を受けているような状態の場合はどうなるでしょうか。あまり持ち出したくはないですが、戦前のような状態にならないとは限らないですよね。既成政党ではなくて、新しい勢力が台頭して来た場合、乱用されないとも限らない、と僕は思います。読み方=解釈だと思うので。憲法を読むのが自民党だとは限らない。もちろん、国民投票という防波堤はありますが。どうなんでしょう。

 

 法律学者のたきもとしげこさんはこのようなコメントを書いています。

 

 

「皆さんは、憲法が、その生死を確認し、死せるものは蘇生させなければいけない、いわば「生き物」であることをご存知でしょうか。

その昔、ドイツで社会権について初めて規定した先進的なワイマール憲法が、突然殺され、無効化されたのです。1933年3月23日のことです。

その理由は、合法的な選挙によって政権を握ったナチスによって、全権委任法が制定されたことにあります。これは緊急事態の宣言さえすれば、国会での議論を経ることなく、内閣が単独で自由に立法権を行使できるという法律でした。

その後、ドイツ国内では様々な非人道的な所業が合法化され、さらには全世界を巻き込んだ前世紀の最終戦争へと発展していったのです。

今現在、自民党は憲法「改正」と称する案を公表しました。

その「改正」案99条には次のような文言がみられます。

「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる(後略)」

これはまさに、全権委任法と同じ効果を持つ、恐るべき案です。

この憲法「改正」案の理念のもと、自由権は「公の秩序」という名目で制限され、自由を守るための統治機構ではなく、統治機構に奉仕する自由へと、私たちの人権は変質されていくでしょう。

戦争を知らない私たちは、一見平和と見える「戦前」に生きているかも知れない。

政治家の皆さん、今一度、政治を志された初心に立ち返り、党利党略を越えた高い理想を掲げ直してください。

有権者の皆さん、ご自分が選ぼうとしている政党や候補者の掲げる政策を、もう一度しっかりと吟味し直してください。

私たちが解決しなければならない問題は山積しています。

しかしそれは、世界平和と調和の中で、必ずや解決できるはずのものなのです。」

 

 

 

 自民党が徴兵制を検討しているのかと問われば、「していない」と自民党は公式に回答しています。なので、僕がそういう印象を与えるようなツイート/リツイートをしたことについては、率直にお詫びします。

 

 そして、この記事は僕の責任で書いていますが、僕の解釈自体が妄想かもしれないですし、誤読があるかもしれませんので、影響はされず(ミュージシャンが何言ってんだっていう意見は、本当に最もだと思うし、偶像化しないで欲しいとも思います)、それぞれ原文や資料を読んでみて下さい。僕の信条によるバイアスも完全には否定できません。茶化したいわけでもないし、尖閣諸島や竹島など、領土の問題がここ数年で立ち上がってきたという状況も理解しています。あっちが立てばこっちが立たず、というように、中国とアメリカに挟まれた難しい立地であることを想像したうえで、本当の知性というのを日本の政治家には他国に見せつけてやってほしいと期待します。ミサイルを撃たなくてもいいようにするのが政治であり外交だと僕は思っている(願っている)ので。日本にしかできない、オルタナティブな発想を望みます。

 

 「正しい」とされていることの中に、将来間違ったことを生み出す種が含まれていないことを願います。一切が僕の妄想であって欲しいと思います。それならば、何の問題もないので。

 

 で、こういうことを語り合う場合、ボケ!とかカス!とかお花畑!とか、そういう言葉でやり合わないで欲しいと望みます。人格否定なども含めて。そして、無用に他国民を排斥しろと発言する方々については、はっきりとレイシズムだと思うので、やめて下さい。

 

 最後に、何よりも原発事故を含む被災地の復興を強力に押し進めてくれることを、新政権だけではなくて政治家の皆さん全体に期待します。頑張って欲しいです。

 

 

追伸。

 

 胃がキリキリする緊張感の中でこれを書きました。「いい」国であって欲しいと思います。胸を張って、「日本人です!」と言いながら、世界のどこへでも行けますように。

2012-12-18 1355779500
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