故郷でのライブ
カテゴリ:日記

 

 自分の故郷、静岡県島田市でのライブが終わった。前半から気合いが入り過ぎてしまって、後半でバテた。ちょっとでも良く見せようとした、そういうヨコシマな欲求のせいだ。いつものように集中して、あるべきところにあるべきエネルギーを注ぐことに没頭すれば良かった。家族や友人の目線を意識した己のスケベ根性を抹殺すべく、ひとり反省会を開催し賛成多数で今度はそういうこと考えるのやめようよ案が脳内で可決された。来てくれた皆さん、ありがとう。あたたかい声援もあって、良い夜になりました。

 

 ライブをしながら、いや、する前から、こうやって普通に地元に帰られることの有り難みを思った。

 

 島田市は浜岡原発から20数kmくらいの位置にある。福島第一原発の事故以前には、世界でもっとも危険な原発と言われていたのが、浜岡原発だ。現在は政府の要請で止まっている。だけども、復水器に海水が流れ込んだ5号機、タービンに多数の傷が見つかった4号機と問題を抱えているので、どのみち止まっていたことなのかもしれない。

 

 津波は島田市までは来ないと思う。だけれど、志太地区と言われているこのあたりの沿岸部は、東海地震が置きた場合は津波の被害があるかもしれない。

 

 だから、東日本大震災は全く他人ごとだと思えない(実際に他人ごとではないけれど)。俺らが勝手に擬人化して「気まぐれ」だなんて言葉をあてがう自然の、その変動のタイミングが違っていれば、丸ごと静岡で同じことがおきていたかもしれない。

 

 そういうことを思った。

 

「想定外」は経験に変わった。だから、次は言い逃れできない。こういうことが起こるのだという事実は東北地方から関東にかけて積み上げられて、僕らはそれを知ったし、例えば、静岡のお茶だって放射能の被害を受けた。それを忘れてはいけないと思う。もし東海地震で浜岡原発が深刻な事故を起こして、島田市が立ち入り禁止になってしまっても、それは、震災を経ても住民が存続を選択したことが原因になる。これほど様々な人が実害や風評被害で苦しんでいるのを目の当たりにしながら、それを横目に、自分の町にはそういうことは起きないと考えたってことが証明されてしまう。言い訳ができない。

 

 俺は、無関心ではいられない。

 

 実家に帰って、美味しいカツオの刺身が食いたい、ぬるめのお湯で新茶を飲みたい、桜えびのかき揚げを齧りたい、吉田の鰻をスーパーで買って食べたい、牧ノ原に登って大井川を眺めたい、岸の山からショボイ六合の60ドルくらいの夜景を眺めたい、静波の海岸で「やっぱ海水浴向いてないわー」って思いたい、友達や家族と女泣かせという清酒で一杯やりたい、親戚の田んぼで田植えをしたい。

 

 そういうもの全部、取り上げられたくない。いつか死ぬけど、死ぬまで失いたくない。死んだあとも、残っていて欲しい。

 

 泣けてくるほど、そう思うよ。強く。強く。強く。12月6日。

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