手羽先の謎
カテゴリ:日記

 

 名古屋公演。震災前のツアーが中止になったとき、何もできなかった我々はせめて何かの役に立てばと募金受付を行わせていただいた。アジカンの演奏がないにも関わらず、沢山のひとが集まってくれてとても嬉しかった。その会場と同じセンチュリーホールで公演が行えるというのは、なんだか感慨深かった。参加して下さった皆さん、どうもありがとう。1年と約8ヶ月前の募金には参加できたが、今回の公演は見逃したというひともいるかもしれない、そうひとには何だか申し訳ない気持ちもある。どこかの会場で、また皆さんの前で演奏する機会があることを、祈っています。

 

 名古屋に行くと、やはり手羽先を食う機会が多い。手軽に食べられるうえに麦酒との相性が良いので、打ち上げの会場にうってつけなのだ。世界の山ちゃんの手羽先はピリっとスパイシーな感じで、風来坊という店の手羽先は同じくスパイシーなんだけど甘辛い。まあ、俺はどっちも好きだ。名古屋のスタッフに正しい手羽先の食い方を教えてもらい、関節のジョイントの部分をボキリと噛み砕いてから全体をくわえこみ、人間で言うところの尺骨とトウ骨を残してトゥルンッと身だけが取れることを体感したときには、喜びで鯱(しゃちほこ)のように反り返ったものだった。

 

 だが、解せないことも、ある。これだけ大量の手羽先を消費しているのだから、当然のごとくその元に着いていたであろう手羽元の行き先についてだ。一度の打ち上げで、少なく見積もってもひとり15本くらいの手羽先を食べる。名古屋の手羽先は肉厚というよりはスナック性に重きがおかれている調理形態なので、そのくらいは余裕だ。だけど、どうやっても手羽元は残るだろう。店が手羽先だけを仕入れていたとしても、鶏問屋みたいなところにドカっと手羽元が山のように積み上げられているはず、だ。にも関わらず、名古屋で手羽元を名物として提供している店を観たことがない。ほとんど、手羽元が神隠し状態になっているといっていい。

 

 

 大量の手羽元はどこに行ってしまったのか。鶏肉本体は解体して唐揚げやその他の料理にも潰しが利く。だけれども、手羽元は手羽元以外に形態を変えるということはまず難しく、やはりそのまま揚げたり、酢で煮たり、あるいは卵と一緒に煮物にしたり、そのくらいしか食べ方がないように思う。そして、例えば、我々のスタッフも含めて20人が15本ずつ一晩で食った手羽先300本分の手羽元がどこかにストックされているわけで、それを一晩で同じように消費するのは厳しい。骨に着いた肉の量が違う。ひとり3本が限界だとして、100人分だ。およそ5倍の人数が手羽元を食べないと計算が合わない。

 

 名古屋の手羽先ブローカーと某チキン系ファーストフードが結託しているのではないか、そういう疑惑も抱いた。つうか、普通にケンタッキーで手羽先が出てこないことを考えると、上手に回ってるだけじゃねぇかと、いろいろ考えた末に辿り着いて、なんだか虚しいけれど手羽元が無性に食いたくなった。11月24日。

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