鳥人間コンテスト
カテゴリ:日記

 

 大阪2公演、滋賀公演、関西シリーズは無事に終了。

 

 琵琶湖ホールは名前の通り琵琶湖の畔(ほとり)にあった。オペラや演劇用だというこのホールには2階3階席があり馬の蹄につける蹄鉄のような形をしている。両翼までビチっと観客席があるので、観客に囲まれているような気分になった。実に無駄のない客席の配置だと思えて高揚した。

 

 

 琵琶湖といえば、やはり鳥人間コンテストだろう。ジェット機が音速を超えて飛行する時代に、それでも人力で飛行するのだという心意気が熱い。エモい。昼のNHKのど自慢、笑点、ものまね王座決定戦などと同列に俺のフェイバリットTVプログラムだ。

 

 そういえば昔、住んでいた横浜のアパートの近くにあった焼鳥屋にふらりと入ったことがあった。その焼鳥屋は老夫婦が切盛りしていて、テイクアウトもできる。俺はひとりだったので、ビールや缶酎ハイなどをコンビニで買って一緒に持ち帰るという選択肢もあった。だけれども、なんとなく、少しだけ背伸びをしてカウンターでしっぽりと飲んでみたい、大学生の俺はふとそんな気分になったのだった。

 

 老夫婦は寡黙に焼鳥を焼いていたように記憶している。老婆のほうがホール役、爺様が焼きを担当していた。少し汚れた壁には小型のブラウン管テレビが設置されていた。放送されていたのは鳥人間コンテストだった。飛べない鶏を焼きながら、飛べない人間が作った飛行機が人力で滑空、または飛行する距離を競う番組を観ている、なんというか、ああ、なんとも言えない空間に紛れ込んでしまったんだなと少し戸惑ったのだった。村上春樹の小説でいうところの、井戸、みたいな場所なのかもしれないと思った。焼鳥は、普通に不味かった。そんなことを思い出した。

 

 震災から1年と8ヶ月。11月11日。

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