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札幌公演は無事に終了。なまら温かい観客たちと良い夜にすることができたと思う。ありがとう。そして前夜のゴッサン基金ライブに集まってくれた皆さんにも感謝したい。募金額はまた別の日記で報告します。
翌朝は場外市場というところに、タクシーの運転手が勧めるままに移動。助手席シートの背もたれ後部には運転手の氏名が書いてあり、「趣味:磯釣り」と表記されていた。こういうパターンの運転手紹介は嫌いではない。ただ、目的地までの間、この趣味について訊くか訊かないかは迷うところだ。お前に話しても...とあしらわれるのも気分が悪いし、かといって水を得た魚のように盛り上がって一方的に語られても困る。だから俺は、あえて趣味の磯釣りについては触れないようにしようと思っていたのだけれど、行き先が悪かった。市場だった。魚介を扱う場所だった。
幸いにも、運転手は穏やかに北海道の磯釣り情報を語ってくれた。超単文に要約すると、「マス釣りは面白いんです」ということだった。フライフィッシングは耳に針がひっかかって好きではない、とも言っていた。筋金入りの磯釣り好きで、漁師小屋に泊まったりもするのだと話してくれた。そして、私を場外市場まで運び、オススメの食事場所まで教えてくれた。ありがたい。
恰幅の良いオッサンがギャルに「ここのは違うんだよぉ」と、北海の刺身の盛り合わせ、帆立焼き、ウニ丼、いくら丼、なんか美味そうな汁、などを豪快に振る舞って「おいしぃ〜。ぜんぜんちがうぅ〜」などと会話が弾んでいるその隣りで、俺は「ウニいくら丼、高っ!!」と貧乏くさいことを思っていた。だけれども、覚悟を決めて、エイ!とウニいくら丼を注文した。美味かった。ただひたすらに、美味かった。「おいしぃ〜。ぜんぜんちがうぅ〜」と言いたかったけれど、独りだったのでやめた。
タクシーの運転手は俺の帰りを待っていてくれるとのことで、あたりを散策してみた。蟹、蟹、蟹、あたりは蟹に占領されているようだった。蟹の季節なのかもしれない。店先に立つ蟹ブローカーみたいな男たちが、丸腰の俺に向かってクソデカい蟹を買わないかと話しかけてくる。生きている蟹をお前の目の前で煮てやろうか、との勧めもあった。俺はその勢いに気圧されて、本当はゆっくりと店内に入って蟹の水槽を眺めたいと思っていたのだけど、どうしても店に入ることができなかった。また、「俺の手作りのいくらだ!食え!」というオッサンの勧めも断れず、散々いくらを食ったあとなのに手のひらにいくらをもらってしまった。手が生臭くなった。
俺の旅はつづく。11月3日。