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wilcoの来日公演が発表された。前回のZEPP東京公演は実に7年ぶりのことだったので(本当に素晴らしかった!)、こうやってコンスタントに来日してくれるのは嬉しい。今後もアルバム毎に続けて欲しいと俺は思う。
日本での人気が海外に比べて著しく低い場合、欧米のロックバンドが来日しなくなってしまうというケースは少なくないように思う。グラミー賞など、アワードをとってギャラと動員が跳ね上がっているバンドがキャパシティ1000人規模の外国でライブをやるわけがないというのは当たり前のことで、まあ余程の親日家とか、そこまでいかなくても日本が好きだとか、サムライや忍者に会いたいだとか、京都もついでに観光したろかしらんとか、あるいは日本人のグルーピーとやりたいだとか、そういうことがない限りそう易々とは日本に来ないというのは仕方のないことだと思う。残念だけれど。
で、まあ、俺はほとんどコレが原因でなかなか来日しないと思っているのだけど、本人たちではなくて、エージェントが「日本に行ってもしょうがねえ!俺の懐には一銭も入らねえ!」と思っている。まあ、人間は多様なので、あの黄色い猿の国に行ったってしょうがねんじゃんと、観にくるヤツがいるわけねぇじゃんと、アジアを蔑視しているエージェントもいるだろうし、興味すらないエージェントがいてもおかしくない。ハイスクールで日系アメリカ人にいじめられてから日本を忌み嫌っているなんて人間がロックバンドの代理人になることだって、運が悪ければあるだろう。「だってアメリカでやったほうが儲かるじゃん」と率直にビジネスについて考えるのが彼らの仕事でもあるので、こちらがいかに熱望していようとも、心情だけではどうにもならないことがある。
バンドメンバーたちは、余程の飛行機嫌いとか、クソのようなレイシストだとか、そういう理由がない限りは海外での公演に興味はあるはずだと俺は思う。俺がどう思っているかというのは比較対象にならないのだけど、例えば遠く地球の裏側の南米の国にだって行ってみたいし、インドネシアとかフィリピンとか、俺たちのファンがそこそこいる場所には多少の出費になっても俺は行ってみたいと思う。文化や風習の違う異国への興味もあるけれど、自分たちの作った音楽が国境や言語を越えていくことは、やはりミュージシャン冥利につきる。とても嬉しいことなのだ。
だからまあ、俺らは好きなバンドが来日した場合には熱狂的に支持するしかない。ナノムゲンに出た欧米アーティストたちのステージがファンたちの想い描いているほどに盛り上がらなかった場合、決まって「この地蔵野郎!盛り上がれよ!」と初見の人たちに怒っている方を見かけるのだけど、それはバンド側が気分を害してしばらく来てくれないんじゃないかとか、そういう気持ちとも直結しているのだと思う。気持ちは分かる。「盛り上がる」ってことに対する態度とか、文化とか、それが共有されていないっていうのもあるけれど、ナノムゲンは本来そういう場所でなにか新しい対流を起こしましょうって趣旨のフェスでもあるので、そのあたりに歯がゆさがあるかもしれないなとも思う。出会うことが目的でもあるというか。バンドたちは毎度、満足して帰っているので心配なく。そのあたりは、俺らもひとりのファンなので、その目線からエスコートしているし。
最近では洋楽を聴かない人が増えたという。確かに、日本にも面白いものが沢山あるし、音楽以外にも楽しいことはあるし、何より情報も作品もたっぷり世の中を還流しているような時代なので、仕方のないことだと思う。無理に聴けとは思わない。でも、欧米のロック音楽のファンとしては、日本での盛り上がりと海外での盛り上がりが乖離していくことには、残念というよりは日本で観られなくなってしまうのではないかという危機感のほうが強い。真逆に、人と人の繋がりで来日してくれるバンドやアーティストも増えているのは事実だけれど。アンダーグラウンドと超エンターテインメントの中間くらいが、一番来づらくなるのではっていう、そこ、俺が好きなところなので、心配。
以上、洋楽ファンのボヤキ。10月24日。