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ライブ前に横須賀の街を散歩した。そんな中、見つけた「飲みしんぼう倶楽部 屋根裏(ロフト)」という看板。良い名前だなと思って、インスタグラムというアプリで良い感じの写真を撮った。
くいしんぼう【食いしん坊】--意地汚くなんでも食べたがる人。
(広辞苑より)
という言葉の意味に「飲みしんぼう」を当てはめると、ちょっと恐ろしい場面を想像してしまう。薄暗い屋根裏にこの地域の飲みしん坊たちが集い、あれも飲ませろ、これも飲ませろと世界の珍酒、奇酒、マスターが海外旅行の記念に買ってきた高級ブランデー、マスターが息子の成人式の日に一緒に空けようと保管してあった息子の生まれ年産の赤ワインなども、何しろ飲みしん坊の皆さんなので飲んでしまうだろう。
マスターもそれでは困る。だけどもそこは接客業、露骨に文句などを言うべきではない。日々の疲れや鬱憤、そういうものを晴らすために酒場はあるのだというのがマスターのポリシーだ。飲みしん坊たちが飲みたいというならば、飲ませてあげたい。そういう優しいひとなのだと思う。だから、マスターは「飲み過ぎるな」などと水を差すようなことは言わずに、店を商店街の2階に構えた。
当然、商店街という立地上、スペースの関係で階段はやや勾配がキツくなる。ベロンベロンに酔って降りることは、恐らく不可能に近い。そうすると、飲みしん坊たちは「酔うてこの階段でコケたら死ぬな」と意識的にも無意識的にも感じるだろう。そうすれば最後の、散々飲んだ後にもう一杯だけ、でも強いのあれだからビールで、となって2日酔い確定の〆の一杯を飲んで記憶もなくしてしまうという確率がかなり減る。無頼漢のような、後は野となれ山となれ的な飲み方をする迷惑な客はエレベーターが設置されているスナックなどを選んで、自然と足が遠のくだろう。この階段のお陰で、店の雰囲気はすこぶる良い(想像で書いています)。
まあ、広辞苑に書いてある「食いしん坊」の意味と、実際に世間一般が現在抱いている「食いしん坊」という言葉へのイメージには大分誤差があるので、辞書の意味通りに想像や妄想を膨らますと大変なことになってしまう。実際、「飲みしんぼう」という言葉とその響きからは、ポップで明るいイメージが湧いてくる。「やだ、もうゴッサン、飲み過ぎて〜。笑」というような、朗らかな飲んだくれ、そういうのを「飲みしんぼう」というのではないか。決して、もう辛抱できない、我慢ならないで寝起きからワンカップを煽る、というようなイメージはどうやっても湧いてこない。俺は「飲みしんぼう」という言葉を気に入ったのだった。
いつか「飲みしんぼう倶楽部」に入会してみたい、そんなことを思った。10月13日。