クリームパン
カテゴリ:日記

 

 パン屋に寄って朝食のサンドウィッチや惣菜パンを買うとき、なんだかむくむくと甘いもんも食いたいなーという気持ちが湧き上がってくるのはなぜだろう。大して甘いパンが好きではない、にもかかわらず。そんで、やっぱクリームだなぁ、トロリロ〜っと、いやヌニュヨワリ〜っとムチュワ〜っと口の中に広がる感じのクリームが詰まったパンとかないかな、あ、クリームパンでも食べようかしらん、と、ついついクリームパンを買ってしまう。俺の頭の中では、その場合クリームパンというよりはシュークリームのクリーム感が想像されていて、十中八九、いや十中十の確立で期待を裏切られて憤慨、ふて寝で一日を棒に振るというようなことになってしまう。だけども、また今日もクリームパンを買ってしまった。それはなんとなく、ウサギのフォルムをしたクリームパンが「フワフワでっせ、ウサギですもの」と俺に訴えかけてきたからで、俺は当然厳しい冬山の雪ウサギフワッフワver.を連想したわけで、もしかしたら「生クリームとぉ、カスタードがぁ、都会のパン屋でぇ、出会ったぁ〜」みたいなウルルン滞在記のナレーションみたいなパンかも分からんと、トングで掴んでトレーに乗っけたのだった。

 

 まあ、ふっつうの、どこにでもあるような、300メートル向こうの角から曲がって来た時点で「お、クリームパン」と気付くくらいの、クリームパンだった。また負けた。なんか、もう、脳まで蕩けるんじゃないかな、という、そういうクリームパンないですかね。やっぱりパン屋としては、パンを味わって欲しい。この小麦粉の、風味、舌触り、「ええイースト菌使ってますね」とか、そういうことを褒められたい。決してクリーム屋ではない。俺は本当はクリームなんかをパンには詰めたくなかった。だってそうだろ、パン屋だから。もっと言えば惣菜パンやサンドウィッチだって、これならウィンナーとか練り辛子なんて挟まんでよろしいと言われるくらいパンで勝ちたい。パンの中のパン、パン・オブ・ザ・パン、みたいなパンをこさえたい。で、バンプ・オブ・チキンみたいに支持されたい。だからもう、この早朝のクリームの仕込みがしんどくてならん。こんなものは大概決まったレシピがあるからして、あの野比のび太のような新人アルバイトスタッフに任せてしまえ。そういうことかもしれん、美味しいクリームパンに出会わない理由は、もしかすると。その証拠にかなり美味いメロンパンは存在する。それはあのカリカリっとした甘い部分もパンの一部なわけで、店主としてはパンとして評価されたいパンの部分にメロンっぽい容姿のあのカリカリも含まれている。だから、使用する砂糖も和三盆などを使うなどして吟味、改良に改良を重ねているに違いない。そういうことを言うと、クリームパンと同じ理屈だが飛び上がるほど美味いカレーパンがあるぞと言ってくるひとがいるかもしれない。だけど、俺は美味いものを食って飛び上がったひとを見たことがないので、揚げ足を取るようにしてその意見を却下したい。黙殺、無視したい。

 

 

 話しはクリームパンを北極だとすると南極に飛んで、園子温監督の『希望の国」を試写した。

 

 

 

 もちろんドキュメント映画ではないのでフィクション、作り話なのだけれども、身につまされるような物語で、俺はなんとも言えない感想を持った。良い映画だと思ったけれど、素晴らしいとは言えないような、それは震災と原発事故を経てのモチーフなわけで、こういう作品が創られるような素地がなければそれに越したことはない、そんなことも思うからだ。それは自分の作品『ランドマーク』にも言えている。こんなアルバム、なければないで良かったと思う日がある。蹴れど殴れど、罵声を浴びせてみてビクともしない現実に対しては、俺は俺なりの方法で抗ってみたかった。そういう作品が出来たし、抗うという言葉の意味と方法を考え直した作品でもあった。そういう複雑な成り立ちであるからして、創った本人が手放しで傑作イイェーイ!!とはとても言えない、そんな気持ちで今もいる。だから、この映画は、本当にこの日記を読んでいる人には映画館で観ることをお勧めしたいのだけど、ここでなんたる傑作!などとはとても言えない。園監督にしか創られない作品だということは確かなのだけど。う〜ん。と唸るしかない。信ずるべきものは、朧げながら見えているのだけど。いや、はっきり分かっているのだけど。俺たちにとっての希望とは何か。

 

 アネモネ、桜草、枯れた赤い花。なんつうか、ハッとする共通の言葉が飛び出すと、空恐ろしくもなる。

 

 んで、アナログフィッシュの『抱きしめて』という曲のことを思い出した。

 

 

 

 クソのようなメンタリティで過ごす日常に埋もれている。這い出さねば。這い出さねば。9月26日。

2012-09-26 1348620000
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