2003年 | 2004年 | 2005年 |
2006年 | 2007年 | 2008年 |
2009年 | 2010年 | 2011年 |
2012年 | 2013年 | 2014年 |
2015年 | 2016年 | 2017年 |
くるり主催のフェスティバル、京都音楽博覧会に出演した。
会場はええ感じの年齢層のええ感じの音楽好きが沢山集い、とにかくええ感じだった。時たまボーっとポーっとヴォーをミキサーにかけ、それを3で割るなどというベタなことはせずに番茶で割ったような、そんな感じのしないこともないSLの音が遠くから聴こえてとても良かった。演奏されていた曲のアウトロが消えかけていくところに被せて鳴らしてくるあたり、運転士のただならない何かを感じた。SLの運転席に音博のステージからの音楽が漏れ聴こえていたかどうかは分からない。ただ、演奏が聴こえていない状況だったと考えると、五感以上の感覚、つまり第六感によるものであるか、もしくはさらに上、第七感、所謂セブンセンシズを開放してのものだと考えなければいけない。その場合、SLの運転士は聖闘士(セイント)ということになるかもしれない。あるいは車田正美先生本人かもしれない。そういう私の妄想の類はさておいて、とにかくSLの運転士にも感謝したい。そのくらい何もかもええ感じだった。
出演者の演奏はどれも素晴らしかった。今回から名物企画となるらしい『ひとりジャンボリー』では、一万人弱はいるかと思われる観客の前に立ってたった一人で演奏を始めるミュージシャンの緊張感とそれが解けて行く様、そこに様々なドラマを勝手に発見して楽しかった。緊張の中で歌い手のチャンネルがビジっとチューニングされる瞬間には、なんとも言えない美しさがある。生きてることそのものみたいな開放感がある。温泉に浸かったときのような快楽もある。ああ、こういうのが音楽なんだなぁと思うステージばかりだった。
俺は俺で楽しく演奏した。最後の曲だけ、少し緊張した。お前ひとりジャンボリーなのにふたりでやってるやん!という視線も良かった。むしろ、興奮した。
ラストのくるりの演奏はどれも素晴らしかったが、Raceは特に素晴らしいアレンジで感嘆の擬音を発語せずにはいられなかった。ムグ〜。惑星づくりは20分くらい聴いていたいと思うほど良かった。オンリーワンだなと思った。他に、似たようなバンドがいない。やってることも、考えていることもユニークで、同世代でロックバンドを標榜しながら音楽家でもあるというような人たちは珍しく、それを地で行くような人たちだと思って感動した。もともと特別なオンリ〜ワン〜みたいな、そういうナンバーワンにならなくても良いような感じのオンリーワンではなくて、これまでの活動の全てが現在に集約されていて、その歩みの中で獲得し積み上げてきた特別な何か、誰とも比較しようのない何か、それを持っているバンドだと思った。オンリーワンでいることは簡単なことではないのだ。そしてその才気が、奥底でほとばしる才能が、人前で包みを開けたら素手で掴める温度と柔らかさであるような、そういうフィーリングが何より嬉しかった。手前勝手に嬉しかった。「くるりが居れば大丈夫」だと思った。良いコピーなので、そのうちビクターが買ってくれないかとも思った。値段については相談したい。
本当に、ええ感じの土曜日だった。「醸造用アルコール」の味がすると清酒に文句を垂れ、ワシは純米吟醸が飲みたいのじゃという顔で雅と戯れるホリエアツシを横目に、2次会を離脱。後ろ髪が全て抜け落ちるほどに引かれながら、実際に抜けたら額に植毛しようと思いながら(俺は断じて禿げていないけれど)、くるりの皆と参加者の皆に手を振って、手を振ってからトイレに行きたくなってもう一度盛大に「お疲れー!」という状況になってしまって申し訳ないような嬉しいような、居酒屋あるあるみたいな、そんな気分で店を後にすると、外は土砂降りの雨だった。傘は持っていなかった。9月22日。