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AIR JAMにはメインステージの他に、東北ライブハウス大作戦のステージがあった。被災された東北地方の沿岸部の街に音楽を、そして何よりその音楽が繋ぎ合わせる人と人の絆を、そういう想いからSPCの西片さんが中心となって立ち上がった活動が『東北ライブハウス大作戦』。様々な賛同者たちによって、石巻、大船渡、宮古にライブハウスが造られ(石巻以外が完成、オープン)、全国各地の音楽好きが想いと共に支援をして下さって、その計画は歩みを進めている。「音楽なんて不謹慎だから鳴らすんじゃねえ」とさえ言われて困惑した音楽関係者たちの、その想いを嘆きや怒りではなくて優しさで返すような取り組みには感動するし、中心になって動いているメンバーたちには頭があがらない。
その東北ライブハウス大作戦のステージでは、太陽光発電と蓄電池によってPAと楽器まわりの電源が賄われた。ステージの後方に設けられた休憩所の屋根の上に写真のようなソーラーパネルを敷き、それを電池に蓄電して、音響まわりの電源に使用したということ。アジカンの主催フェス、ナノムゲンフェスではLEDなどの照明に使用したけれど(The Future Timesの記事参照)、今回はその太陽光由来の電源で音楽が鳴った。それは、とても意味があることだと思った。
思い起こせば、震災直後から被災地に自分の足を使って物資を運び、必要ならば手を貸し、そうやって真っ先に動き出したのはパンクスたちだった。そういう人たちが中心となって行っている『東北ライブハウス大作戦』という活動のステージが再生可能エネルギーで賄われるということ。「計画停電中なのだから、音楽なんかに電気を使うな」という言葉に対して、確かに生活や医療などの電源が真っ先に確保させるべきだと思う。それに異論はない。だけれど、電気を使って音楽をやることに対するバッシングは度を超えていたようにも思うし、「お前らは電気がないと仕事にならないんだから、原発に対して意見するな」というような、もっと言えば「電気を使うなら原発に反対するんじゃねえ」というような言葉をミュージシャンやバンドマンたちに投げつける人はいまだに沢山いる。だったら、自然からのエネルギー、再生可能なエネルギーを使って演奏する。とてもシンプルな反旗の掲げ方だと思う。使わない、のではなくて、意志を持って、意味のある方法に投資する。そういうやり方だ。というか、そういうやり方でしか世の中は変わらない。言うだけでなくて行動すること、これは前にも書いたようにパンクスの理念。
ナノムゲンで我々が使ったのとは別の会社(チーム蔵王、コネクテック)が用意したこのソーラーパネルなどの設備は、設置と輸送のコストを抑えることにも高い意識があって工夫されていた。パネル自体も安価なものであるとのこと。こうやって設置と持ち運びにかかるコストが抑えられてゆけば、いずれ野外フェスだけでなくツアーの電源の何割か、いや、すべてを太陽光発電と蓄電池で賄える日が来るのだと思う。太陽光発電は音楽にこそ、向いているのかもしれない。
ステージ脇に設置された蓄電池、そして電源用に変圧する装置。機械の詳しい仕組みまでは解説できないけれど、普段使っている電源などに比べてノイズが極端に少ないとのことだった。なので、レコーディングなどの音源としても優れている、という説明だった。そして、石油燃料の発電機によるヴェ〜〜〜というような雑音がステージ脇にまったくない、ということも特徴的だった。なぜならば、太陽光発電は音がしないからだ。とても静かだった。ピーカンの快晴ではないAIR JAM2日目のこのステージでも、余裕を持って運営されたいた。
こういう記事はほとんど話題にならない。「◯◯反対!」と書いたほうが人々は反応する。だけれども、こういった何かに「賛成!」する行為にこそ俺たちは目を向けるべきだし、実際に投資するべきだと思う。少なくとも俺はそうしたい。ミュージシャンたちが巨大な産業の電源まで取り替えることはできないかもしれない。だけれど、せめて、自分たちの活動が、音楽のための電源を選ぶことが、未来に対する投資になるのならば進んでやりたいと思う。とてもシンプルだと思う。
愛だぜ、これは。そして真のパンク魂。
願わくは、生活に使う電気が、どこからやってくるのか、それ自体も使う側が選べるような仕組みになって欲しい。携帯電話のキャリアを選ぶように、いや、どんな音楽を聴くのかは自分で決めるしかないように、当たり前に選びたい。9月21日。