読みまつがい
カテゴリ:日記

 

 栃木県の真岡市、井頭公演で行われたロックフェスに出演した。地元ラジオ局の十周年を記念して始まったロックフェス。このフェスの観客は熱狂的で嬉しい。とても良い夜だった。

 

 楽屋まわりのケータリング(食事や飲み物)なども充実していて素晴らしかった。焼きそばやプルコギ、馬鈴薯にガーリック風味のバターを塗ったヤツ、豚のバラ肉(肉食えないけど)、などを鉄板で焼いてくれたり、丸ごとのきゅうりを冷やしておいてくれたり、おせちもいいけどカレーもねという人にはゴーヤが入ったようなカレーライスがあったり、ホットコーヒーのポットと生ビールのサーバーという、本来ならどちらかがおろそかにされてしまうドリンク設備が共存していたりと、とても良かった。それを普通に公園の野外ビアガーデンで雑多に食らうみたいな環境も俺の好みには合っていた。生ビール?そこにあるから自分で注いでー的なノリがストライクだった。中ジョッキかグラス生、あるいは小生、ちょこっと生ビールってメニューにあるけどこれどのくらいですか、瓶ビールのみしかも大瓶うわーちょっと多いなぁとか、ビールのサイズで迷うことが多い自分のような人間にとってはとても有り難い。

 

 ただ、楽屋の張り紙には申し訳ない気持ちで一杯だった。「◯レディオベリー ×ラジオベリー」「真岡 ◯もおか ×まおか」「井頭公演 ◯いがしらこうえん ×いのがしらこうえん」このみっつの言い間違えについて、どれだけ地元の人たちが苦い想いをしているか、例えば、第一回サマーソニックが開催された富士急ハイランドで来日勢がフゥ〜ジ〜!!と叫ぶたびに「それ違うよ...苦笑」と観客が心の中で毎度思っていたようなことがこの地では繰り返されていることを想像した。申し訳ない気持ちになった。

 

 思えば、会場までの車に乗るとき、地元民ではないドライバーの方が「行き先は栃木県の、いのがしら公園ですね」とたずねてきた。俺は当然いがしら公園であることをそんな張り紙を見ないでも知っていたので、この場合は「運転手さんすみません、それはいがしらと読みます。地元の方も毎度MCなどでロックバンドのフロントマンがいのがしらー!などと叫ぶもので、大変迷惑しています」と伝えるべきだったかもしれない。だけど、俺はそれを流してしまった。まあ、無事に着けばいいかなー、と思った。本当にすまないと思っている。

 

 ちょっと早めに会場入りすると、クロマニヨンズの演奏がはじまったところだった。慌ててステージの袖に行った。やっぱスゲーなぁとか思いながら、袖で踊っていた。途中、マーシーのシールドが抜けたのかイントロでギターの音が出ずに演奏が止まった。「ロックンロールは電気がなくっちゃはじまらないけど、原発がなくてもできるぜー!」とヒロトが叫んで、演奏は再開された。興奮した。そして、その通りだなと思った。電気がなくてはアンプは鳴らない。だから感謝の気持ちももちろん持っている。だけども、電源のすべてが原発だったという状況は今までかつて一度もない。ここはずっと混同され続けて、原発を否定するなら電気を使うなという阿呆な言説が跋扈している。もうため息しか出ないなーと思っていたけれど、たったひと言で、詩的に、完全にロックンロールの文体で、シリアスにもならずふざけもせずに甲本ヒロトは絶妙な声色でそう言った。敵わんなーと思った。そう思う前にウオー!!!!!ってなった。中学生の俺に戻っていた。(敬称略なことをいつも怒っているひとがいるが、いちファンに戻って発言しているのであって、本人を目の前にしてそのような無礼をはたらいているわけではないということを理解して欲しい。こんなことをいちいち書かなきゃならんことには辟易としますが、もちろん尊敬しています。)

 

 この日はメンバーといろいろな話もした。久々にどんなおっぱいが好きかというようなどうでもいい話ではない、内容の濃い討議をした。和やかに。自分たちのロックンロールはどうやって転がっていくのか。そういうことを確認した夜だった。9月9日。

2012-09-09 1347152040
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