大きなレコード会社にして欲しいこと
カテゴリ:日記

 

以前、ツイッターにて、「売り場のひとが音源を聴きもしないで、前のアルバムの実績で新しいアルバムの仕入れ枚数を決めるなんておかしいと思う」という趣旨の発言をしたところ、沢山の意見をCDショップの店員さんから(様々な部署の)頂きました。その意見のほとんどが意義のあるものだったし、とてもためになりました。返信をくれた店員さんたちにはとても感謝しています。そんな中で驚いたのは、「私たちだって音源を聴きたい。聴かせてくれないのはアナタたちではないか」という意見でした。「仕入れ枚数を決めるときにサンプルが届いていることなんてない」とも。

 

「どういうことだ?」と。主に自分たち側(スタッフサイド)に対して腹を立てました。事務所の社長をつかまえて、どういうシステムになっているのだと激しく怒りをぶつけたわけなのですが、スタッフサイドの回答は「サンプルは送っている」ということだったのです。うーむ。「でも届いてないですよ」と。それはもう、聴かれもしないサンプル盤をゴミとして捨てているようなものではないかと私は感じたわけです。誰が悪いとかではなく、残念だな、と思いました。

 

別の方法が必要だと思います。

 

大きなレコード会社は、自社のサーバーに発売前の音源を一定期間アップして、CDショップ店員向けに公開して欲しいです。ショップ店員向けにアドレスを公開し、パスワードなどを設定して発売前の新譜をストリーミングで聴けるようにするのが、全ての面においてプラスになると思うのです。そんなに難しいことではないと思うし、リッピング可能なサンプルCDを不特定多数に配りながら不法な流出に脅えるというような訳のわからない構図の解消にもなると思うのです。

 

どうでしょうか?

 

例えばアジカンの音源、アルバムに限って言えば発売の3ヶ月前には完成しています。僕らのシングル『踵で愛を打ち鳴らせ」は武道館ライブの段階でマスタリング(CDに収録するための音量や音色などの最終調整)まで終わっています。マスタリングが終われば、その日にだって誰に聴いてもらっても大丈夫な音源はデータとして完成しているのです。それをCDに入れるのに時間がかかって、CDに入れて配ることで不信感や機能不全が立ち上がるのでは、メディアに振り回されているだけだと私は思います。

 

会心の出来だと思うアルバムが、前作の売り上げ実績、つまり資本主義経済の合理性のみによって捌かれてしまうことに抵抗があります。コマーシャルに、インスタントに売り場に大展開されることを望んでいるわけではありません。マネタイズ(お金にかえること)に興味があるわけでもありません。

 

単純に、音楽にとってのひとつの現場であるCDショップの店員さんたちが、発売前に音源を聴くことが出来ないのはおかしいと思います。そうでなければ、音楽ではなくて、キャラクターグッズを取り扱っていることと変わらなくなってしまいます。我々がやりとりしているのはCDケースではなくて、その中身なのですから。

 

私にとっては長い間、CDショップの店員さんがDJのようなものでした。憧れていました。「なんで○○の新譜が入らないんだ!」と食ってかかったこともあります。笑。売り場のポップを観て、weezerにも出会ったし、名盤にも駄作にも出会って、それ自体が文化なんだなと改めて思います。

 

大きなレコード会社(これはちょっと越権だけど、大きなチェーン店の本部の皆さんも)たちは、文化としてこれを守って欲しいと私は思います。

 

広義や狭義に関わらず、DJがポップミュージックを担保しているということに対して、法人として愛情を贈って欲しいのです。最新の方法で。そして本当に広い意味では、リスナーひとりひとりがDJなんです。友達に「これ良いから聴いてみなー」っていう行為、これがDJでなくてなんなんだっていう。だからそういうことも忘れないでいて欲しいです。(これはコピーコントロールという機能によって踏みにじられた過去があります。)

 

こんなところに書かずに、レコード会社に向かって直接言えば良いことなのだけど、なんとなく、ここに書き留めておくほうが良いと思いました。

 

インディーズにしかできないこともありますが、メジャーにしかできないことも確実にあります。だから、大きな会社のひとたちには、大きな会社にしかできないことを、堂々とやって欲しいと私は思います。それはとても意味や意義のあることなので。

 

なんというか、血流が良くなったらと思います。物質や資本としての流れというよりは、音楽や思想や愛とか、そういうものの流れです。その後に、物質的なものはついてくるのではないでしょうか。(とはいえ、私はマネタイズに関する逡巡を常に抱えています。考え中。表現と、対価を求めることについて。)

 

長々と、すみません。

 

愛を込めて。

 

さて、スタジオに行ってきます。

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