全曲解説 新世紀のラブソング 第一回
カテゴリ:日記


投稿者:えんも/25/female/東京

本文:ずばり、タイトルはなぜこのタイトルに決められたのでしょうか。新世紀と言えど、10年が経過しているのになぁと、気になりました。





A.

 思えば西暦が2000年代に突入したその時、私は横浜市の某駅のロータリーで通りすがりのヤンキー達とハイタッチを交わしていました。それほど、ミレニアムというお祭り騒ぎが訳のわからないエネルギーを放っていたということです。当時の経済はというと、バブルはとうの昔に弾けていて、肌身に直接何かが刺さってくるほど悪くはないが決して良くはないと誰しもが思っているような状況。その頃は、バンドの活動は全然軌道に乗っていませんでしたが、何となく世の中自体は段々と良くなっていくものだと思っていました。楽観視というか。ミレニアムで気分が良いし。世の中自体が束の間の躁状態というか。



 そんな2000年に私は社会人になったわけなのですが、世の中の浮かれたモードとは裏腹に、会社の倉庫でモヤモヤにを捏ねて捏ねて伸ばして平らにして、包丁で細長く切ってソバ状にして、止せばいいのにそれにドロッドロのソースのようなネガティビティをかけて焼いて食うみたいな毎日を過ごしていました。田舎に帰ろうと何度も思いました。秋にリリースされたRadioheadの「KID A」というアルバムを出勤中に聴いて、そのまま武蔵小杉で南武線に乗り換えずに自宅に帰ったりしていました。



 翌年の9月11日にツインタワーに飛行機が突っ込みました。友人からのメールで何か凄いことが起きていることを知りましたが、数日前にTVゲームで遊んだままaiwaのテレビデオのリモコンをなくしていたので、入力切換えが出来ず、チャンネルはゲームのまま。全くもって何が起きているのかわからないまま、いつもの6時半の電車に乗って出勤しました。ニュースを観たのは、会社に着いてからでした。それでも何だかよくわかりませんでした。実感、ゼロ。様々なアーティストたちが色々な言葉を並べたり歌ったりしていたように思いますが、私には一体どうやって件のテロとの距離を計ったらいいのか、全くもって検討がつきませんでした。ただあっけにとられたまま、不穏な空気に巻き取られていったように思います。



 21世紀は、最初の年に、このディケイド(10年)の、もしかするとこの世紀の、モードやムードを決定付けてしまうような事件に遭遇してしまったのだと、私は思います。事実、あれから10年が経とうとしている今でも、不穏な空気に包まれたままというか、ミレニアムの頃に朧げに抱いていた新しい世紀への希望の欠片もないというか、とにかく閉塞感に覆われているように思います。ポピュラー音楽もこの10年、特にロックの場合は内向きというか、内省的な時代を過ごしたのだと自分の楽曲を聴いてもわかります。

 簡単に言うと、そういうのはもう嫌だなと、いい加減にしたいと、これっきりにしたいと、あの頃の「なんとなく良く成るかも」みたいな気持ちを返せと、ひいては今年から新世紀ってことにしてやり直さないかと、そういう曲が作りたかったし、そういう曲だなと思って「新世紀のラブソング」と名付けました。



 逆回転のギターに乗せて、自分の青春時代の忌まわしき残像からリリックをスタートさせているのにもそういう意味があります。何なら、旧石器時代から旧世紀まで葬り去って、新しい時代を熱望してやろうではないかと、もう一回ヤンキーとハイタッチしてやろうかしらと、やるぜと、そういう曲なのです。歌詞中にガンガン出てくる「涙」という言葉は、赤ん坊が生まれるときに流す「涙」。だから誕生だったり、再生かもしれないし、感情の発露だったり、そういうものの象徴なのです。どこかの雑誌では陳腐だとか不謹慎だとかバッサリやられましたが、良いんですそんなものは。私は、いや、俺はその「涙」を熱望している。歓迎しているし、祝福しているし、徹底的に愛おしいと思っている。そういうことなのです。





というわけで、第一回の回答編です。

5回にわけて、それぞれの曲について回答していこうと思っています。初回から結構な長文になってしまったので心配ですが、まあ、ゆっくりとしたペースでやっていこうと思います。そのくらいのアルバムだと思っているし、長い時間をかけて自分でも、聴いてくれるひとたちにも、咀嚼して欲しいと思いますし。

「曲について語っちゃうのってどうなの?」とか「作った時点で完結してないの?」という問いもあるでしょうが、私としては、作品について語ることは大切だと思っているので、奔放にやりたいなと、そんなふうに思います。

ちなみに、質問はもう選んでありますので、大丈夫です。また、次の曲になったら募集しますね。

そして、恐らく誤字脱字があるかと思いますが、ツアー中の忙しい最中に時間をかけて校正している余裕が全くないので、どうか大目に見て頂けたら嬉しいです。



というわけで、長いこと待たせてしまってすみません。

頑張って更新します。



読んでくれてありがとう。
2010-11-07 1289057400
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